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her room

 イヤな男ほど好きだと言ってくる。
 どうしたって好きになれなくてひとりで夜を過ごすよりはと電話番号を打って呼び寄せている。
 そうすると悪循環になるらしく、男から次はいつならいいのか聞いてくる。家と電話を知られているから困ってしまうのだ。
 困って、どうするか。
「殺すしかないよなと思って、もうあきらめている」
「そこは「ごめん、無理」とかいうとかホテルで会うとかしろよ」
 物騒な女だな、とホルマジオは厭そうな顔をした。
 爪でひっかいた肉の塊がずんずんと小さくなるのをぼんやり眺めながら、どうしていつもこんなことをするのか尋ねられた。
「その手は考えたことなかったな」
「ああ、頭がバカなのか」
「ひどいこと言わないで」
「事実だぜ」
「正論は時に人を傷つけるのよ。謝って」
「誰が謝るか」
 バービー人形のように小さくなった体を投げ渡され慌てて両手で受け取る。人形のようにぬくもりが無くなったそれをぽきぽきと折っていく。
 細かくしてからずっと静かにしていた犬の前に置くと、ぺろりと食べてしまった。
 ホルマジオはおっかねえの。とさらに呟いて、犬の前に座る。
「手なんて出さないで、食っちまうわよ」
「躾のなってねえ犬だな」
「無差別に吠えない、いい子よ。お前の猫とは違う」
「猫はいーの」
「アそう」
肩をすくめて再度立ち上がる。温度の無い緑の目が部屋をぐるりと見渡した。
「なあ、イヤじゃない男はどうするんだ?」
「え?」
「好きな男はなんの餌にすんだよ」
「そんなのいない」
「つまらねェーの」


202208/10

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