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連載未定や短編以下のぼつ達

工藤新一
手を振り払ったのはどちらからだろう。わたしだった気もするが、新一からかもしれない。目の前で泣き崩れる蘭に寄り添い、慰め、わたしに感情のない目を向ける。今傷を負ったのはわたしであって、手のひらにべったりと付く血をどうやって隠せばいいのか、なんて。「蘭、大丈夫か」ああ。もはや、そんなこと必要ないのか。わたしの血まみれの手のひらだって、噛み締めた下唇が腫れてたって、新一はどうでもいいんだ。悲しい、悔しい、虚しい。どれもいまいち当てはまらない感情に目を伏せた。「おい。お前、まさか、あいつらに……」蘭を庇って突き倒したのはわたし。蘭を庇ってナイフが刺さったのはわたし。蘭を庇って絶望を見るはめになったのは、わたし。

工藤新一
東の高校生探偵として有名だった工藤新一は、ある日を境に姿を消した。かと思えば、何年間後にひょっこりと姿を現した工藤新一と共にある組織は壊滅した。それは、わたしが所属していた職場でもあり、駄目だとわかっていながらも足を突っ込んできていた組織だ。穏便に済ませるつもりは両者とも無かったのか、海外へ転勤という形で壊滅したその日にちょうど居合わせなかったわたしは唯一の生き残りらしい。あの方もベルモットも、ジンすらもわたしを置いて居なくなってしまった。「ーーオメー……こんな所でなにしてるんだ?」喪服に身を包んだわたしは、組織があったであろう場所へと出向いていた。「……貴方はいいわね。元の身体も手に入れて、大切な幼馴染も抱きしめる事が出来て」その言葉は、探るような声音で近付いて来ていた工藤新一の警戒心を更に激つけせたらしい。わたしをまじまじと睨み、問うてくる。「……何者だ」「何者だって? 貴方がその手で壊滅させた組織の生き残り、とでも言えば満足かしら」そう返せば、純粋で愚かな眼差しと共に、こぼれ落ちた疑問の声が耳に届いた。

浅羽悠太
自動販売機の前で立ち止まり、ふと、いつもと違う飲み物を買ってみる。フルーツジュースを意味もなく飲み続けていた今までとは違って、いちごオレはやたらと甘く感じた。悠太が見ている景色と、わたしが見ている景色が違うことが当たり前のように。悠太がわたしから離れていってしまうのは、わかりきっていたことだった。「ーー悠太の嘘つき」音を立ててなくなったいちごオレを見下ろして、わたしは、あの子と帰って行く悠太を見つめて、すぐに目を逸らした。



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