rubbish
連載未定や短編以下のぼつ達

美風藍
「藍ちゃんに会いたい」消えてしまいそうな声でこぼれた言葉は、音もなく地面に落ちていく。わたしに向けられることのない表情で後輩達と歩いて行った藍ちゃんは、パートナーでもないわたしのことなど忘れてしまったように見えた。ロボットだから忘れたということはないはずなのに、そんな風に見えてしまったことに対し、わたしは慌てて踵を返す。もしかしたら、もう恋人でもないかもしれない。好きだよって気持ちがようやく理解出来たと、微笑んで教えてくれたあの日が嘘だったかのようだ。連絡が来なくなったのはいつからだったか、人気アイドルだから滅多にデートは出来ないけど、二人でゆっくり会って笑い合って、たくさん触れ合えたのはいつだったか、もう随分と前になる。藍ちゃんはなんとも思わないのだろうか。わたしがいなくても、なんとも思わないのだろうか。滲んだ視界で指を動かす。「藍ちゃんに、会いたい」ぼんやりと打ち込まれた文字を何度も見つめて、消した。藍ちゃんは人気アイドルで、後輩達の指導もある。それに比べて、わたしはマスターコースに入れなかった出来損ないだ。もともと、世界が違った。藍ちゃんの隣で歩くあの子の才能にだってかないこっない。抱きしめるように握った楽譜を近くのゴミ箱に押し込んで、逃げるように走った。

工藤新一
泣いたって叫んだって、怒鳴り散らしたって。あいつは振り返らない。血まみれになったわたしの両手を見つめて、ようやく、気付く。「お前……なに、して」目の前が真っ暗になると同時に触れられた肩に、わたしの意識はぷつんと切れた。ーー報われない想いの代償は、いくら拭っても消えない。



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