強くあろうとしてた。私の全てをかけて、特別になりたいと。
他には何も望まない。………望める筈もない。
「あ、律ちゃん!」
表彰式も終わり会場を撤収した私たちは前のように繋心さんに連れられて居酒屋でご飯を食べてきた。今日は一試合だけだったので解散時間は早かったけれど、相手は勿論試合内容も白熱したものだったから、試合に出ずっぱりだった選手はご飯を食べながら寝落ちていた。
そして、それも解散になって家に帰る途中。徹から連絡をもらって少し寄り道をしていた。
「お待たせ」
「いんや、俺らこそ呼び出してごめんね」
普通に会話する私たちに岩泉は一瞬固まってしまい、それでも少しホッとしたように笑った。
「仲直りしたんだな、ちゃんと」
「まぁね!」
「喧嘩ってわけでもなかったけど」
それでも、良かった。と言った岩泉に少しむず痒くなる。
「仲直りどころか付き合ってますから!」
「だろうな」
「だろうな!?だろうなってどう言うこと!?」
「そうじゃなきゃお前のテンションがここまで高くなる筈ねぇつってんだよ」
まぁ、岩泉は私の呟きも聞いてただろうし、及川の気持ちも勿論知っていたのだろう。その上で何も言わずに見守っていてくれていたのはありがたい。
「色々ご迷惑かけます」
「………ま、お前らに迷惑かけられんの嫌いじゃ無いからな」
そうカラッと笑って私の頭を撫でた岩泉に、は?と固まる。
「なんでそう、岩泉は……クソ」
「ちょっと岩ちゃん!律ちゃんに手ぇ出さないでよね!!」
最初の頃は考えられなかった距離で、笑い合えるのが嬉しい。しがらみがなくなったわけじゃ無いし、まだ進み続けるということはその分傷つくということ。でも、もう次こそ大丈夫だ。
「あーお腹すいたぁ!俺、パスタが食べたいな!」
「俺ラーメン」
「また!?昨日吐くほど食べたのに!?」
「櫻井は?」
「私はわりと食べてきたからどこでもいいよ。強いて言うならデザートが食べたい」
じゃ、ファミレス行こ。夜遊びだ!なんて笑う徹に手を差し伸べられる。
あの時私たち三人が離れていればとか、反論していればとか、行動を起こしていればとか。後になって思うことはあるけれど、あの出来事をきっかけにして日常《バレー》を失うことになるなんて微塵も思っていなかったし、それが悲しいと思える自分がいることも知らなかった。そして、またこうして肩を並べることができるとも思っていなかった。
「行こうか、律ちゃん」
「そうだね、徹」
そう視線を合わせて笑うと、いつも通りの私たちに戻れた。
あの日にもう一度戻れるとしても、私はきっと同じ選択をする。いくら後悔をしたって、私は間違った選択をしていないと胸を張って生きたい。
好きな人《及川徹》と一緒に。
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