いつだって、割り切れない思いを力に変えてきた。無謀だと言われても挑戦し続けた場所で、同じ頂を目指す人と出会った。彼らがいたから今まで頑張れたし、これから先も頑張れる。
「コンディションは?」
「バッチリです!今日もアイツをギャフンと言わせてくるね」
「ふふ、楽しみにしてる」
東京オリンピックの翌年、私達は入籍してアルゼンチンへと飛んだ。言語や生活には慣れないけれど、彼がいるから不思議と大丈夫だと思える。
今日は結婚して、徹の所属チームのトレーナーとしてお世話になり始めてから初めての試合だ。
世界情勢も落ち着きを取り戻しつつあり、新しい事を始めてはそれが『普通』になるまで繰り返して行くんだろう。
「及川、櫻井」
「若利」
「ちょっと!もう櫻井じゃなくて及川なんですけど!」
「ああ、そうだったな」
「別に無理に呼ばなくてもいいよ」
同級生に旧姓を呼ばれるたびに、私は気にしていないのに徹がいちいち訂正するものだからなんだか逆に照れ臭くなる。
「………律」
「え、」
「は!?」
「及川だと、被るからな」
これで良いだろと言った若利にそれもそうか……?と思い返していると、徹がまた「駄目だよ!!」と騒ぐ。きっと、私達はいつまで経ってもこの調子なんだろうなと思った。
「負けないからな」
「受けて立つ」
そう睨んで、笑った。
コートの中を今日も飛び回る彼らを、私は一番近い場所から見守っているんだ。
『バレーボール(排球)』
コート中央のネットを挟んで二チームでボールを打ち合う。
ボールを落としてはいけない、持ってもいけない。
三度のボレーで攻撃へと繋ぐ。
上を見上げる、球技である。
私は彼の名前の下に大きく記されている背番号をバシッと叩いて言った。
「行ってらっしゃい、徹。見てるよ」
「行ってきます!」
prev next
Back
Top