「櫻井、誕生日おめでとう!!!!」
月島達が入部して少し、朝練が始まった。
元々烏野は女子バスケ部の強豪校らしく、体育館の奪い合いが室内の運動部では繰り返されている。しかし、今年の春から武田先生が顧問になったことと私たちの強い意志で朝早くから練習ができるようになったのだ。
そして、青城との練習試合を控えた今日、四月二十三日。
朝練のためにいつもと同じ時間に体育館へ向かうと、ドアを開けた瞬間菅原に名前を叫ばれた。
言われた通り今日は私の誕生日で、朝から両親にも「今日はケーキね」と言われて家を出てきた。十八歳だ。
「櫻井さん、今日誕生日なんすね」
「おめでとうございます!」
「あ、うんありがとう二人とも………」
影山と日向にも祝われて、それに気持ち半分で返事をする。それもそのはずだった。
「なんで、三人とも………組体操しているの?」
四つん這いになった田中と澤村の背中に菅原が仁王立ちしていて、入ってきた瞬間にそれが見えれば挙動不審になってもおかしくないと思う。
「これ組体操じゃないから!ケーキだから!!」
「ケーキ………?」
いや、悪ふざけにしか見えないし、本当に何をしているんだこいつらは。そもそも私の誕生日知ってたんだなと驚いたんだけど、そう思っていると体育館にやってきた潔子が教えたのだと言った。
「清水にさっき聞いて知りました!
ちなみに、俺の誕生日は六月十三日です!
以後お見知り置きを!!」
「俺は三月三日でぇす!!」
「あ、そうなんだ。かわいいね」
「かわいいとは?」
三月三日は、雛祭りだから。そう言えばなるほど。と納得したように縁下が頷いた。けれど、三月一日に卒業式があるから田中の誕生日は祝えないだろうけど。
田中と菅原のハイテンションぶりがなんとなく怖いし、素敵なかっこいい先輩というイメージが崩れつつあるけれど大丈夫だろうか。
「……はい、プレゼント」
「ありがとう潔子」
「紅茶とお菓子にしました」
「愛してるよ潔子」
私は紅茶党で、ストレートティーを好んで飲むからペットボトルの紅茶は飲めない。だから、小さな缶に入った茶葉だった。お菓子はいつも鞄に常備しているからありがたい。何のフレーバーか楽しみだと思えば、みんながギョッとして私を見ていた。
「り、律さんが……わ、笑った………!」
「レアだ……!」
「きっと今日はいい事があるな!」
ようやく組体操を解いた三人はラッキーだと笑っていたが、私だって人間。笑うときには笑う。
でも、こういう反応及川と岩泉にもされたことがあるんだよな。私ってそんなに表情を殺しているイメージが強いのか。
「不服」
「まあまあ。律って大人っぽいしね」
「でも、櫻井さんってバレーしてる時は表情豊かですよね」
サラッと影山にそう言われて、そうか?と思い返す。影山とバレーをしていた時はバレーを好きだと思っていなかったから、表情に出ているということはなかったはず。
「中学の時の#櫻井#……!アレだよな【女帝】って呼ばれてた」
「【女帝】……!」
菅原の言葉に日向が反応し目を輝かせて私を見てくるけれど、その呼び名はおちょくっている感じがしてあまり好きではない。
「昔の話だろ。今はこうして烏野にいるわけだし。
でも、律がバレーうまいのは事実だし、お前らも何か困ったこととかあれば聞くといいぞ」
「へぇ………そうなんですか」
その辺の説明は自分からしていなかったなと思い、澤村からそう言ってもらえて助かった。
「ポジションはウィングスパイカーで、中学の時にいくつか賞も取ったことある」
「ジャンプサーブ!教えてください!!」
「お前はスパイクからだボケェ!!!」
日向がボールを持って駆け寄ってきたけれど、それを止めたのは影山だった。影山には昔教えたことがあったなぁとあの頃を懐かしむ。まぁ、よく目の前でやっていたことがほとんどで実際にアドバイスを出したなどはそこまでなかったけれど。
「でも、なんでもできるよ。だから、強くなる為に利用して」
そして私は、ここでもまた繰り返すのだった。
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