「変人コンビは補修で途中参加だったよな。
 櫻井はテストどうだった?」
 試合を終えた黒尾にスクイズボトルを渡すと、テストのことを聞かれた。音駒はマネージャーがいないから、一年生が手分けして業務をしていたため、私が積極的に手伝う様にした。
 まぁ、高三だし卒業後の進路のことを考えると、どうしても勉強のことを考えてしまう。私たちが一月の春高までバレーをしている分、同級生は卒業後の進路に沿って黙々と勉強しているのだろうし。
 私が行く予定の大学は全国でも名の知れたバレーの強豪校であり、英語教育、スポーツ教育にも力を入れている。そのため海外での活動を視野に入れた留学制度も充実しており、設備も立派。そして何より、偏差値がアホみたいに高い。
「テスト終わってからユース合宿だったから、まだ返ってきてない。でも連絡入らず今もこうして練習捨てるってことは赤点は無い」
「お前が赤点取るとか全然予想つかねぇわ」
「前まではどこに行くかとか将来何したいかとか考えてなかったけど、だから成績だけは上位をキープしてたしね」
 本当にやりたいことが見つかった時にスムーズに進めるようにとそうしてきた。進学クラスにいる澤村と菅原と授業内容に差はあるけれど、同じかそれ以上のはずだ。知らないけど。
 今回のテストは進学先を決めるために重要だし、とりあえず回答欄は全部埋めたけど、正解かどうかは別。ぶっちゃけ自信がないやつもある。
 黒尾は卒業後どうするのか決めたのだろうかと思いながら、話を続けた。
「得意科目は?」
「英語」
「へぇ、櫻井って理系の顔してるから意外」
「理系の顔……」
 英語は高校では共通でしょうと思いながら聞き返すと、黒尾は海君を指しながら言った。「海は文系の顔だよな」いや、わからん。
「英語って単語覚えんのダルいし文法覚えんのもダルい」
「それ言ったら勉強全部ダルいんじゃない?」
「それ。でも、得意科目聞かれてパッと英語って言えるのはすごいと思うけど。何かしてんの?塾とか」
「行ってる暇無いって知ってる?」
「だよな。でも、英語。英語か……
 俺も話せるようになんないとな………」
 ということは、もう明確な進路が決まっているのだろうか。自分から話し出すまでは聞くつもりはないけれど、同じ学校だったらいいのになんて話したことがあるものだから多少は気になる。
 外国語は話せて損はないし、習得するに限ると思う。こんな会話、昔及川とした覚えがあるなと思いながら話す。
「…これ、色んな人に言ってるんだけど、外国語を覚える一番手っ取り早い方法はその国に好きな人を作ることだと思うの」
「じゃあ、ソイツと話すために勉強したってこと?誰?」
「……俳優さん」
「は」
 黒尾はポカンと口を開けて私を凝視する。そんなに意外だっただろうか。
「両親の影響で洋画とか、海外文化が好きで。それで昔、好きな俳優さんの舞台を見にブロードウェイに行ったことがあって。
 そこで俳優さんに話しかけるために必死で勉強したのが始まりかな」
「……櫻井って、そういう」
「今でもたまに手紙とか出してるよ」
 少し照れるけど、小さい頃は少しミーハーみたいなところもあったのだ。今もだけど。好きな俳優さんと話すために英語を調べて、ずっと発音を練習していたのを覚えている。
 黒尾は何故か顔を抑えて唸っていた。
「ま、今となってはここまで上達できて良かったって思ってるし、海外行くときとか困らないかな。海外リーグもいつか挑戦したいって思ってるから、昔から習慣にしておいて良かった」
「ふうん?じゃ、俺が海外旅行行く時は櫻井連れて行くわ」
「はは、それも楽しそう」
 そんないつかが実現すればいいなと、私もドリンクを飲んで黒尾と海外に行くならどこがいいかと考え出した。



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