「───で、この前岩ちゃんとここのラーメン食べに行ったら百面ダイス振らされて、九十四辛のラーメン食べて声出せなくなったんだよね」
「うっわ」
 及川の話を四人がけのテーブルに三人で座って聞いていた。
 ランニング中、及川と岩泉の二人に出くわしたら今からご飯食べに行くからどうかと誘われた。私もそのまま帰ってお昼の予定だったので了承すると、連れてこられたのはラーメン屋だった。朝から烏養さんの家に練習に向い、サーブの練習をしてきた帰りでお腹が空いていたから嬉しい。
「その後俺が及川の通訳することになったんだが」
「全然意思疎通できてなかったんだよ」
「あ?できてただろうが」
「できてなかったよ!?」
 幼馴染でずっと一緒にいるとは言え、そこそこ限界があると知った。でもその後岩泉も同じ状況になったらしく、その時はちゃんと意思疎通できたのだと。それは関係性がどうこうではなく、岩泉の察しが悪かっただけなのでは。
「…まぁ、岩泉って鈍感だしね」
「は?」
 でも、ラーメンで辛さの調節って中々した事はない。カレーならよくあるけど。
「律ちゃんは辛いものって平気?」
「割と。でも、そこまでして食べたいって程でもないかな」
 自ら進んでする分には興味あるけど、百面ダイスなんて殆ど運だから怖いし。コレって最早ネタだよなぁと思いながら挑戦している二人と違って、無難に味噌ラーメンと餃子にした。
「お、俺二十一」
「それって平均なのかな?………俺五十八!」
 二人とも前回九十四辛を食べたからか、謎の余裕が生まれている。
 最近どうしてるとか話しながら運ばれてくるのを待ち、いざ実食。

「………うわっ」
 スープが赤い。担々麺の赤というか、最早油絵具みたいだ。これで五十八って、九十四はどんなだったんだろう。
 黙々と食べはじめたけれど、水が凄い勢いで減ってる。
 そんな及川のラーメンを見て、呟いた。
「ね、少し食べてみたい」
「ん!?辛いよ!?」
「いいから、少しだけ交換しよ」
 小皿を貰って、及川のを少しだけよそってもらった。
 色もさることながら、匂いも凄い。辛そうな刺激臭というか、最早異臭だ。
 少しだし、と思って口に運んだけれど、臭いほど辛さは感じなかった。辛いというか、最早痛い。
「……、」
「大丈夫?」
「水飲むか、櫻井」
「……らいじょうぶ」
「エッ」
「それは絶対大丈夫じゃ無い」
「ほら、水」と岩泉に差し出されたそれを一気に飲んで餃子を口に放り込んだ。
「………何これ。よくそんな食べられるね」
「………男の威厳ってヤツだよ」
「うわっ……
 男の威厳ってこんな所で発揮するものでもなくね?



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