「佐久早聖臣?」
「ああ」
夏の全国大会三日目。順調に勝ち進んでいる私達は今日残り一試合あり、それまで時間があるからと休んでいる時に牛島君から話しかけられた。白鳥沢は朝イチで試合があったらしく、昼過ぎまで時間があるらしい。
以前の様に調子や練習、試合について話していると牛島君が口にしたのは先ほど戦った学校の選手の名前で、一年生ながらスパイカーとしてコートに立っているところや冷静なところが私に似ていると言った。
「後は、多分回転だな。レシーブの際捉え辛い」
「へぇ………腕の振りとかかな。いや、それだとカーブか。
ってことは手首の振りか、インパクト………」
牛島君とは会えばバレーの話をするけれど、彼が自ら名前を出して人を褒めることってあまりないものだから、初めて聞いた一つ下の男の子の名前はすぐに頭に入った。
しかし東京の学校の選手とのことで試合を見ることも少なく、私が彼と出会ったのは夏から秋と季節が移り変わった頃だった。
「櫻井、こいつがこの前言っていた………」
「佐久早君、だよね。はじめまして。櫻井律です」
「………どうも」
頭を軽く下げ簡単な礼をした彼は私をジッと見ていた。試合を見る機会は少なかったけれど、牛島君が言っていた様に彼が放つスパイクは捉え辛そうで、なかなかの曲者らしい。
「試合は、」
「見たよ。でも、やっぱり私とは違うと思う」
何の話をしているんだ、と視線で訴えてきたようなので牛島君に君のことは少しだけ聞いていたんだと前置をして話す。
「プレースタイルじゃなくて、バレーに対する熱の入れ方?」
「ああ。姿勢、だな。
いつだって全力で挑み自身も考えることをやめないが、それはバレーを好きだという気持ちからではないだろ」
「………まあ」
「うん」
「そこが、似ていると思った」
似ている、か。と思いながら佐久早君を見れば彼も私を見ていたのか視線がかち合った。
「北一の試合、見ました。
律さんはどうしてバレーしてるんですか」
「どうして………特別になりたいから?」
「は?」
「自分だけが一番でいたい。
勝ち負け以前に、私は私以上のスパイカーが居るってことが嫌なんだと思う」
「………何それ。つまり一番強いスパイカーでいたいってだけじゃない?」
「まあ、そうかもね」
「……ふうん。俺とは違うよ、若利君。
律さんは一番にならないと気に食わないみたいだけど、俺は別にそう思ってないし」
「気に食わないとは言ってない」
「俺はただ、終わる時悔いが無いようにしたいだけ。いつでも終わっていいって思っていたい」
佐久早君が言っていることもわかる。だけど私は終わる時は何が何でも勝って終わりたいから決定的に違うんだろう。
「でも、律さんはスパイカーとしてはどうか知らないけど見てる限りバレー選手として同年代に敵はいないよね」
「、」
「動きに無駄がないし、何でもできる。それに律さんはサーブを確実に決めるから攻撃すらさせないってとこあるし」
「サーブが強いのは良いことだ」
そうして試合について三人で話していると、佐久早君と同じジャージを着た男の子が駆け寄ってきた。
「あ!!聖臣こんなところに……ウシワカ!っさん!!」
「?ああ」
「元也」
そろそろ試合が始まるのか、佐久早君を呼びにきたらしい。彼は古森元也君と言い、佐久早君の従兄弟なのだと。
「知ってると思うけどこっちが白鳥沢の牛島若利君。で、隣の女の人が北川第一の櫻井律さん。若利君も律さんも三年生で、俺と同じスパイカー」
「へぇ………てか、お前が初対面で下の名前呼び珍しいな」
「うるさいな」
牛島君のことを名前で呼んでいたから見かけによらずフレンドリーなのかと思っていたけれど、人は選ぶらしい。
「………何?」
「…………いや、何でもない」
私が下の名前で呼ぶ男子なんて、繋心さんくらいしかいないから珍しいなんて思っていると、横からじっとりとした視線を感じたので話しかけてみると視線を外された。一体何なんだ。
「律さん、俺のこと聖臣でいいよ。
佐久早君って、なんか慣れない」
「そう?じゃあ聖臣。……と、若利」
「、」
「って呼ぼうかな。牛島君って長いし」
「………ああ」
そろそろ試合が始まるのなら今日はこれで解散かな。と腕を伸ばした。
「じゃ、見てるからね」
「ああ。またな」
「………ウシワカと櫻井さん、付き合ってんの?」
「さあ。どうでもいい」
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