「えっと、そうだな………私は、中学二年の冬以降三年間……かな。色んな噂が出回ったり、怪我でバレーを辞めて、ピアス開けたりして頃が一番。………インナー染めたりしてたし」
「………そっか」
 やっぱり、あの頃律ちゃんが負った傷はゆっくりと癒えてきたと言えど、まだそれは焼きついて離れないみたいだった。
 ピアスを開けているのは再開してすぐに気づいていたけれど、インナーカラー入れていたなんて知らなかった。いや、青とか緑とか似合いそうだけども。
 俺はそれを話す律ちゃんの様子に少しだけ胸を痛めた。
「及川は?」
「俺は……やっぱ中学三年の春かな。飛雄が入ってきて、自分の座を取られるって焦って……」
 それで、岩ちゃんに頭突きを食らって。何だか思い出したら懐かしくなってきた。
 チラッとドアを見てけれどうんともすんとも言わず、鍵は締まったまま。俺達がこの部屋に閉じ込められて、既に一時間は経過してある。
「開かないね」
「だねぇ」
「……もう少し、何かあるんじゃない?」
「ん?律ちゃんこそ、何かもっとないの?」
 俺が彼女に話せないことは正直沢山ある。でも、それは大体言っちゃったし。
「……それじゃあ、言うけど。
 一度、繋心さんの彼女のフリして遊園地でダブルデートしたことがある」
「ん!?うっそ、待って」
「頼まれて、つい」
「いや、まぁ……烏養さんと律ちゃんが仲良いってのは知ってるし良いけど」
「そう?じゃあ次及川」
「ん〜っと……律ちゃんと牛若ちゃんに嫉妬して、他の女の子とキスしたことある……かな」
 これ言ってよかったのかな、なんて思いながら律ちゃんを見ればスンッとしていた。
 え、どういう顔?嫉妬しているの?それとも不機嫌なの?
「知ってる」
「お、おう……」
「てか、及川さっきから私の知ってることしか言ってない」
「うっ」
「言えないこと、だよ」
「ぐう……!」
 言えないから、言えないんじゃん!
 でも、確かに律ちゃんはさっきから俺の知らなかった事を打ち明けてくれている。だったら俺も、もう腹を括るしかない。
「じゃあ私から。そうだな………
 知らない女の子とキスしてる子を見て、好きって気付いて、失恋して。
 それで………私もしたいなって、ちょこっと思っちゃった、とか?」

 その言葉と表情に、頭がフリーズした。
 え、待って。そんな、え?
 あの律ちゃんがそんなこと考えて??は???

「かわいい」
「え、」
「これからは律ちゃん以外とはしないから。絶対」
「う、うん……はい、及川」
 はぁ〜これだから律ちゃんは。油断しているとすぐに爆弾を投げ込んでくるんだから。
 淡々と話始めたかと思えば、少し照れ臭そうにしてくるところがもう、本当に言葉にならない。いや、可愛い。しんどい。無理。控えめに言って最高。
「これ………言っても引かない?」
「うん」
「絶対?」
「絶対」
 じゃあもう、出ないと。ここ出たら、絶対律ちゃんの事抱くから。抱きしめて、キスして、絶対抱き潰してやるから。
「実は、俺………ど、童貞で」
「うん」
「中学の頃から自分で抜く時、律ちゃんの事オカズにしてた」
「、」

 ピシッと律ちゃんが固まるのとガチャッと鍵が開いた音がしたのはほぼ同時だった。



prev  next


Back
Top