思い出がきみを弱くする

学年一、背の高い女子がいるらしい。なんでも男子よりも大きいらしいが、タイミングが悪いのか今のところ出会えていない。そんな話を、翼は大和にしていた。

「ああ、唯都のこと?」
「唯都ちゃんていうんだ、同じクラスなのか?」
「おう、あと幼馴染だから。」
「世間狭いな―……。」

今度昼休みにでも連れてくると大和が言った次の日、大和が昼休みに中庭に、いつもの優奈と一緒にもう一人、女子を連れてきた。

「……おー……。」

たしかにでかい、メンバー内で一番大きな徹平より少し大きい。

「唯都連れてきたぞ!」
「はじめましてぇ〜。」

大きな体を深々折りたたんでぺこんと頭を下げ、彼女はのんびりとした口調でそう言った。

「狐禅寺唯都って言います〜、よろしくお願いします〜。」

顔を上げて、人懐っこい表情で笑う彼女に、他のメンバーもなんだかんだ打ち解け、次第にいつもの調子に戻った。そんな周囲の話を、唯都はにこにこと笑いながら聞いていた。

「いやぁ、でっかいって聞いたからどんな娘かと思ってたけど結構おとなしいのな。」
「初対面の人には怖がられちゃいますね〜、圧迫感があるって。」

困ったような顔でふふっと笑う唯都を見て、翼は中身は普通の子だなと思っていた。が、どこか妙な雰囲気も感じていた。大和と優奈がじゃれ合っているのを見る目が、優しいながら何処か寒々しいものを感じる目だった。
だが、嫉妬のようなものではなく、二人に向けるそれは慈愛のようなものが籠もっている。なのにこの寒気のする雰囲気は何なんだろう。

「あ、私今日日直だから先に戻るね〜。」
「おー、また教室でな〜。」
「はーい。」

またにこにこと笑いながら軽く手を振り、去っていく唯都を見送りながら優奈は小さく漏らした。

「ほんとは少しは初対面の人には警戒してほしいんだけどね……。」
「まあ……唯都だしな〜……。」
「?……何の話だ?」
「あー……。」

問い掛けられれば二人は少し気まずそうに顔を見合わせ、あんまり言いふらさないようにと前置きして話し始めた。
なんでも、唯都は小学校に上がるちょっと前に誘拐されかかったことがあったらしい。その時は異変に気づいた二人が助けたために事なきを得たらしいのだが、それ以降も初対面の相手に警戒心を抱かないために、二人にとっては少し不安に思っているらしいのだ。

「俺らの知ってる相手なら安心だからって言って全然警戒しないんだよなぁ〜。」
「それを騙ってる相手に引っかからないか心配なんだよね〜。」
「あー……。」

なんとはなしに、彼女が二人を無条件に信頼しているのだなということまでは読めた。が、彼もまだ彼女の本質に気づいていなかった。
そして、そのそこに暗澹たる感情が横たわっていることも、気づいていなかった。

end?
--------------------
作成:17/9/24
移動:20/8/30

ALICE+