わたしは淋しい水でできてる

唯都は大和に連れられて、よく一緒にやってくるようになった。ただ、練習中は入ってこないで外でおとなしくしている。犬みたいだと思いつつ、隣りにいる唯都を翼は盗み見る。
唯都は自分の先を少し離れて歩く大和と優奈を見つめている。やはり、二人を見つめるその目に宿っているのは慈愛そのものだが、それでも何処か寒々しい雰囲気がある。

「……唯都ちゃんさぁ、」
「はい〜……?」

声をかければ不思議そうな顔で首を傾げつつ隣の自分を見下ろしてくる。女の子に見下されるなんて貴重だなぁなんてどうでもいいことを考えつつ、少し彼女の様子を伺ってから口を再び開く。

「大和たちの方には行かなくていいわけ?」
「ああ……。」

まるで、何だそんなことかと言わんばかりの反応をしつつにこりと笑う。

「別に、私は一緒にいれなくて良いんですよ。」
「……へえ?」
「……二人のことは大好きですけど……私はその中に一緒にいられなくたって良いんです。二人は優しいから、私を外したことはないですけどね〜……。」

そう言って、唯都は再び視線を前に向ける。ちょうど振り向いた二人が唯都に向かって笑いながら手を振ってきて、唯都も笑ってそれに応える。二人を見つめるその目は、慈母のそれだが、それでも寒々しいものがつきまとう。
それはそうだろうと、翼は肩を竦めた。さっきの言葉で、確信した。つまり彼女にとって、あの二人だけが世界で、そしてその二人が笑っていることだけが大事で、自分はその勘定に入っていない。自分を極限まで薄めて、二人のためだけに尽くせる自分でいようとしている。
ブレイストのメンバーとも上手く溶け込んだのも、結局大和のためなんだろう。

「……自分のことは良いのかい?」
「……私?……私のことは、最後で良いから……。」
「……そうかな〜。」
「いいんですよ〜?」

心底不思議そうな顔で首をかしげる相手に、筋金入りだなと心のなかで呟く。そうこうしているうちに、ちょうど分かれる道の手前まで来ていた。それを確認すると、少し小走りで唯都は二人の方へと向かう。
が。

「……?」
「ん?」
「……翼くん……は……お家、逆じゃない、ですか?」
「まー、遠回りしても良いんじゃない。」

そう言って、翼はそのまま唯都たちと一緒の方向へと歩き出した。

「んぁ?翼こっちだったっけ?」
「たまには遠回りすんのもいいかと思って。」
「へ〜?」

そんな翼を見ながら、唯都は再び首を傾げつつそれでも何も言わずに4人で歩いていく。

「んじゃあ、また明日。」
「……はい。」

家の前まで結局ついてきた彼に、にこっと笑ってから唯都は軽く会釈して家へと入っていく。

「……まー、見守り係の見守り、なんてーのも……乙なもんかもな。」

彼女の背中を見送ってから、翼は小さく呟いた。それから、唯都が翼と一緒に帰る日は、唯都を家まで翼が送るというのが殆ど習慣と化すのはまた別の話。

END
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作成:17/9/29
移動:20/8/30

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