中央フリーウェイ

那由多は自身の単車に跨り、ジーンズに黒のライダースジャケットを羽織った格好で、レイのバイト先のバーの近くで待機していた。たまに男が声をかけてきたものの、人待ちなんでとそっけなく返しつつ手首に嵌めてある腕時計を確認していた。

「おまたせ!」
「ん、おつかれ。」

それと同時に私服に着替えて出てきたレイが駆け寄ってきたのを見て、那由多はそう言いつつ相手の分のヘルメットを手渡す。

「いや〜、那由多がドライブ誘ってくれるなんて珍しいな。」
「まあ、たまにはね……ちゃんと掴まっててよ?」
「わーってる!」

ヘルメットを被った相手が背後に跨り、腰のあたりに腕を回して密着してきたのを確認すると、那由多もヘルメットを被り、エンジンを掛けて走り出した。そうしょっちゅう乗るわけではないが、なんとなく大型バイクの免許を取っていた那由多はこうしてたまに、レイと二人で夜にドライブしている。

「きょーはどこいくんだー?」
「……ん、海。」
「あいよ。」

信号で停車した那由多に、レイが問いかければ那由多は短く答え、それにレイは頷き、信号が変わると再び走り出した。

「……着いたわよ。」
「ん〜……ああ、月が出てるから結構明るいな。」

海岸近くの駐車場へバイクを停めて、レイと那由多はヘルメットを外しながらバイクから降りる。海岸に降りる階段を降り、そして静かな夜の海を暫く二人で、ちょうど置かれていたベンチに腰を下ろして眺めていた。

「……ああ、流石に寒くなってきたな……。」
「んじゃあ、そろそろ帰る?」
「そーだな……。」

そう言いつつ、レイは那由多の手首を軽く握った。不思議そうな顔で見やる那由多をぐいと引き寄せて、それに抵抗もままならず那由多は簡単にその胸に抱き寄せられた。

「……レイ……?」

顔を上げた那由多に、そのままちゅっと唇を軽く重ねた。那由多の頬が赤く染まり、そのまま相手を突き飛ばす。

「いって。」
「……バカじゃないの……。」

いつものツンとした雰囲気が崩れ、もじもじとしている那由多を見れば、レイはにへっと笑って立ち上がり、再度近づく。

「……かえろーぜ?」
「……うん。」
「……那由多のそーゆーとこ、可愛いと思うんだけどなぁ〜。」
「……ばか。」

そう言うと那由多も立ち上がり、もと来た道を戻っていく。

(ほーんと、素直じゃねえんだから。)

そんなことを思いながら、レイはその後を追う。ぶっきらぼうにヘルメットを渡してくる那由多に、レイは再度顔を近づける。

「……!」
「そんな警戒すなよ……ちょっと近付いただけなんだし。」
「そう、だけど……。」
「……またされたい?」
「ばか!」

そう言うと、那由多は手早くメットを被ってバイクに跨った。それを見てケラケラと笑いつつ、レイもメットを被って後ろに跨る。

「事故んなよ〜。」
「事故ったらレイのせいだから……。」

END
-----------------------------
作成:17/10/1
移動:20/8/31

ALICE+