猫茶日和 > MY HERO ACADEMIA > オレの1番欲しいモノ
とうとう言っちまった。
まぁ、俺自身でも遂にというのか、今更…と言われるくらいなのか…分かんねぇが。
5歳の時に出会って
特殊な『個性』持ちって事もあったが、それとは別に直ぐにアイツ自身が気になった。
『俺が必ず守ってやる』という『約束』を自らしてしまう位には…
菊が大事で、惚れてんだって幼いながらに自覚した。
始まりはちょうど3日前。
菊が言うには羽陽曲折を経てクソ髪とハデ髪が付き合った。
それに関しちゃ、ハデ髪が『兆に一つの可能性をモノにした』としか言いようねぇ気がする。
まぁ…俺にとっちゃ、どーでもいい事だ。
そう、本当にどーでもいい事だった。クソ髪野郎があんな事さえ宣わなきゃ。
いつもの習慣で切島達と一緒にトレーニングを終えたオレは寮のリビングにあるソファーの一角で手にしたペットボトルの水を飲み干した。
夕飯どうするか、なんて話をしていた時に切島の携帯にハデ髪からのLINEが来た。
LINE画面を見た途端にクソ髪野郎はいつも以上にだらしねぇ満面の笑みを浮かべると
「霧々から連絡来たから悪ぃが俺は夕飯パスでもいーか?」と宣った。
「いーよなぁ、彼女持ちは〜」等と上鳴が宣い、
「へいへい、行ってら〜」と瀬呂が見送った。
「悪ぃ、すまねぇ。また今度な!」
切島はどーにもしまらねぇ面でそう言うとこちらに目線を向けて来た。
別にアイツがどーしようが本当にどーでも良かったんだが、切島の奴が案外律儀なのは俺も知っている。
面倒くせぇと思いつつも「好きにしろや…」とタメ息交じりに口にすると、またもや満面の笑みを浮かべて宣った。
「ありがとな!爆豪!!彼女っていいぜ!!!お前も頑張れよ!!!!」
………………………… は?
流石の俺も一瞬切島が何を言ったか理解出来なかった。
驚きのあまり目を見開いて固まった俺と、余りの出来事に固まった周りに全く気付く事無く、
クソ髪野郎はそのまま朗らかな笑顔を浮かべて去って行った。
(あの野郎は…今、なんっつった?……なんつって去って行きやがった??)
……沸々と怒りが湧いてくる。
(頑張れ…? あぁ!? 何で俺があの野郎に応援されなきゃならねぇんだ!?!!??)
自分でも眉間の皺が厳しくなっていく自覚をしていたら、アホ面が(よせばいいのに)笑顔で宣った。
「あー…まぁうん!爆豪も!頑張れってさ!!」
ボンっっ!!!!!!!!!!!
リビングにそれはそれは…大きな爆破音が響き渡った。
「なにチョーしに乗っとんだ…あぁ? 殺んのか、このアホ面が…」
「ウェい…」
俺に爆破され無様に締め上げられるアホ面に同情でもしたのか、瀬呂が口を挟んだ。
「ま…まぁまぁ、落ち着けって爆豪。此奴はともかく、切島のアレは絶対悪気も他意も無いって」
「そうそう!!!って、いやいやいや、俺も無いって!!!!!!」
「いや、お前の今のはさ…」
「辞めて!??瀬呂!!?そーゆー事言うなよっ!!!バクゴーもそんな顔辞めて!!!」
怖いだなんだと、アホ面が喚き立てる。
(逐一癇に障る言い方をしやがる野郎だな、此奴は…。)
俺が益々眉間の皺を深めているとアホ面が尚も喚き立てた。
「だってさ!爆豪自身だって切島と違って薬我の事に関しちゃ自覚はあるんだろ!?」
「だったら何だってんだ……」
「それなのに!あんだけ仲良くて付き合ってねーじゃん!!」
「それが何かてめぇに関係あんのかよ……」
「いやいやいやいやいや、確かにかんけーないですが!!!辞めて!!その手!!!!!」
ボボンっっ!!!!!!!!!!!!!!!!
またもやリビングにそれはそれはそれは……大きな爆破音が響き渡った。
惨めにも、真っ黒焦げたアホ面がブーブーと喚く。
「いやもう、爆豪ヒデぇ…本当の事言っただけじゃねぇかよぉ……」
「あぁ!!?」
「まぁまぁまぁ。確かに俺もずっと何でかなぁ〜とは、思ってはいたけどもさ」
「テメぇもか…」
「そりゃあ、まぁね。流石に思うよ。お前と薬我に関しては」
瀬呂までもが、知ってるか?1Aの七不思議のひとつだぜ?等とほざきやがった。
どいつもこいつも…他人の事なんざ、ほっとけや…と思いながら深いタメ息を付く。
「こっちにゃ、こっちの都合ってもんがあんだよ…」
そう言って埒の明かない心底無駄なやり取りを終わらせようとした時だった。
「ははぁーん!爆豪!お前、怖いんだろぉ?」
「……あ?」
「あー…所謂、幼馴染の関係性が壊れるのが怖いって奴?」
「そうそう!それだ!!」
「まぁ確かにあんだけ仲良かったらワンチャン行くわなぁ」
「だろう!?なーのーにぃ、行かねーってのはさぁ…」
「なるほどなぁ〜」
うんうん、分からなくはないぜ…と頷き合う雑魚2人。
頭の中でプツンと何かがキレる音がした。
「上〜等〜じゃねぇか…」
「「……え??」」
アホ面としょうゆ顔の声がハモる。
ボボボンっっ!!!!!!!!!!!!!!!
本日通算3回目の爆発音がリビングに響き渡った。
「怖いだぁ!!!??よくもまぁそんな事言いやがったなぁ…このクソ野郎どもが!!!!!」
「お、落ち着け、爆豪…」
「こちとら…充〜分、落ち着いとるわ……」
「いやいやいやいや、その手とその目の何処がぁ!??」
「落ち着いとるってんだろがぁ!!!!見とけや!!!!!!!!上等だ!!!!!!!!」
「「……へぇ???」」
「告ったるわ!!!!!!!!!!!!こちとら5歳の頃から自覚しとるわ!!クソ髪なんかと一緒にしとんじゃねぇ!!!!!!!告り殺したるわ!!!!!!!!!!!!!!」
捨て台詞を残し俺はリビングを後にした。
「「………マジかよ………」」
それがちょうど2日前の事だ。
『告ったるわ!!!』と宣ったモノ…全てにおいてこの2日間タイミングがクソ過ぎた。
こんな時ほど、いつもなら余裕で菊と2人になれる筈が…どうにもこうにもなんねぇな…と思っていた矢先。
今、目の前にはちょうど良いタイミングで菊がいる。
場所も放課後の教室で、しかもこれまた都合良く2人だ。
「ゴメンね、勝己くん…いつも日直の仕事手伝って貰って…」
そう言うと菊は書いていた日誌から顔を上げて俺を見て来た。
「いーから…日誌とっとと書けや」
「うん、ありがとう…もう終わりだから」
「おお…」
誰も他に人の居ない教室に夕日が差し込んで菊を照らした。
(さて、どーすっか…)
タイミング的にバッチリだったとしても一筋縄ではいかねぇのが菊だ。
好きだなんだ言ったトコでコイツは『私も大好きだよ』等と普通に言いかねぇ…
俺の好き、とコイツの好き…は意味合いが違ってた、としてもだ。
それを逐一説明すんのもどうかと、思う。
まぁ…最終的にはそうなっちまってもしゃーねぇが…。
等と考えていたら菊が顔をあげた。
「あのね、勝己くん…」
「あ?」
「その…ちょっと聞きたい事があったんだけれども…」
「……」
「その…」
「はよ、言えや…」
「うん、えー…と、誕生日、プレゼント何が欲しいとか、あるかなぁ?」
「は?」
「えーと、だからその…勝己くんの誕生日…もうちょっとでしょう?」
「ちょっとって、一カ月近くあんだろ…」
「一カ月って結構早いもん…準備とかあるし…」
そう言うと菊はちょっと困った面をした。
誕生日な…コイツの気持ちは嬉しいが…ぶっちゃけ今はそれ処じゃねーんだよ、と考え始めて…ふ、と思い付いた。
「なんでも、いーんか?」
「うん!勿論。何でも良いけど…あ、でもあまり高い物だと流石に厳しいかなぁ」
お小遣いで買える物なら…とちょっと菊が笑う。
「買うっつーか…物っつーか…」
「うん」
「………お前。」
「……え…?」
俺が意を決してそう言うと、菊は意味が分からないのか不可思議な面をして俺を見ていた。
「なんだその面は?」
「え、いや、だって…」
俺がそう問いかけると菊はますます混乱した面をする。
「言っとる意味、分かんねぇか?」
「その、わたし…?」
そう言うと菊は混乱した顔のまま自分を指刺した。
(充分、分かっとるじゃねーか…)
混乱しているコイツの面が面白すぎてちょっと笑って見とったら…分りやすく菊の面が真っ赤に染まった。
「えぇ!!??わた、私って!!?えっ!?ほ、本当に!?」
ようやっと俺の言っとる意味を自覚したのか何なのか、はたまた混乱のし過ぎか…
菊は益々、面を真っ赤に染め上げてこっちを見上げて来やがった。
「こんな事で嘘なんてつかねーだろ…つか、今までもお前に嘘なんかついた事ねーだろが…」
知っとんだろ?とタメ息交じりに聞き返す。
「それは…うん、そーなんだけど…でも、だって…」
なんだその面は…そんなに寝耳に水だったんか?
菊の鈍さは知っとったが、余りの鈍さに流石にまたもやタメ息が漏れた。
「……嫌なんか?」
「え…?」
流石に直ぐに同意が得られるとは思ってねぇ……が、嫌だと言われるとも………
菊にゃ悪ぃが…思ってねぇ。つか、思わせねぇ。
「い、嫌とかじゃ…なくて…その…」
「…なんだよ」
伊達に5歳の頃からコイツの事を見とった訳じゃねぇし、幼馴染を貫いとった訳じゃねぇ。
俺が『嫌か?』って聞けば菊の答えは絶対に『嫌』じゃねぇ。
コイツがそう言わない事位分かってる。
我ながらズリぃやり方しとる自覚はあるが……流石にココは譲らねぇ。
「そ、その…す、直ぐに…答えなきゃ、ダメ、かなぁ?」
「どんぐらいなら、分かんだよ…」
「……せ、せめて、その…あの、勝己くんの、誕生日…とか…?」
「誕生日って、一カ月近くあんだろうが…」
「一カ月って結構早いもん…その…心の準備とか、色々あるし…ちゃんと…その、考えるから…」
互いの意見がどこまで行っても平行線になりそうだったが、遂に菊が泣き出しそうな面をしてこっちを見上げた。
「…………………ダメ?」
「………わーったよ……」
(分かった、しゃーねぇから譲歩してやる。してやっからそんな面でこっち見んな。)
俺は渋々とタメ息を付いた。
「日誌、書き終わったんか?」
「あ、う…うん」
「出してくっから、帰る準備しとけや…」
「…うん、ありがとう…」
こんな状況下でも律儀に礼を言ってくる菊の手から日誌を受け取ると俺は教室を出た。
……誕生日まで後、28日。
(此処まで来といて、冗談じゃねぇ…逃してたまるかよ。)
生まれて初めて、………心底、自分の誕生日が待ち遠しくて仕方がねぇわ。
教室で待つ菊が真っ赤な顔を机に伏せて…
「どうしよう……さっき本当に、嫌…じゃない、って…思っちゃった……」と呟いていたのは、
また…別のお話。
written by りんご茶
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