猫茶日和 > MY HERO ACADEMIA > 霧が舞い猫が空飛び菊が咲く
「おい、クソ猫!」
「…?」
「たまにはテメェも役に立て!分かってんだろうな!」
体育祭、予選が終わったと思ったらすぐに本選。しかも騎馬戦。
障害物競走は自分の個性にはだいぶ有利な種目だったけど、騎馬戦はどうだろう。
騎馬を組むにもやる気がある人とは嫌だし、そんなに熱意があるわけでもないし、ていうか自分のクラスの人どれだっけ?って思ってたら、カツカツが突然鬼の形相で怒鳴ってきた。
役に立てってなんだろうって思ったけど、カツカツから心配の匂いがしたから、きっとキクのことだろう。カツカツが心配するのはキクだけだから。どうやらキクも予選を通過したみたいだ。
「黒井ちゃん、一緒に組んでもらってもいい?」
「うん。」
キャットフォームならキク1人でもあたしのことを支えられるだろう。キクは戦闘向きの個性ではないし、とりあえず自分たちの点数が取られないように一緒に逃げればいい。
…あれ、カツカツが言ってた役に立て、ってキクを守れってこと?なんで素直にそう言えないんだろう。
「あれ?まいちゃんだ。ひとりかなあ?」
「…?」
猫になってキクの頭の上に乗り、指差す方向に目を向ける。そこにはひとりぽつんと周囲を見回している人がいた。あの人は見たことがある。ツンツンの前に座ってる人だ。名前は…なんだっけ?
思い出そうと頭を悩ませている間に、キクはその子の元に足を進める。
「まいちゃん。良かったら一緒に組まない?」
「菊ちゃん、いいの…?」
「もちろん。黒井ちゃんもいいよね?」
「にゃう。」
頭の上から返事をすれば、目の前の女の子はちょっと安心したような、それでも驚いたような顔をしながらありがとうと言った。名前は霧々まいちゃんというらしい。…長いからキリーでいいや。
「え、黒井ちゃんって、黒井さん?」
「うん、この黒猫が黒井ちゃんだよ。個性でキャットフォームになれるの。」
「えぇ!?そうだったの!?」
「にゃー。」
「猫の姿だと喋れないの?」
「喋れると思うよ。たぶん面倒なだけじゃないかなあ。」
「そうなんだ…。」
恐るおそる、キリーは手を伸ばしてくる。たぶん頭を撫でようとしてくれてるんだろう。だけど初めて喋った人にすぐに触らせてやる義理はない。
「にゃあ。」
猫パンチで弾いてやると、すでに下がっている眉がさらに下がる。
「まいちゃん、ほら、猫って気まぐれだから…。」
「そっか…。」
「にゃーぅ。」
現状維持。それがあたしたちの目標。
デクの点数が尋常じゃないことになっているから、それにみんなが釣られてくれることを祈りながら逃げる算段を立てる。あたしのハチマキが取られなければいい。つまり標的はあたしだけだ。
「無理なくやろう!」
「う、うん…!」
「みゃーぅ。」
逃げ切って見せよう。
ーーーーーーーーー
地面に足がつかなければ良いってことだから、あたしが上にいるならふたりが騎馬を組む必要もない。別々の場所に待機をしてもらって、敵を空中でかわしてから着地する。余裕があれば相手のポイントも狙うけど、あくまで現状維持。自分たちのポイントを失わないことが目的。
あっちの方ではデクとかカツカツとかひえひえが熱戦を繰り広げているけど知らない。
「くっそ、ちょこまかと…!」
「はさめ!」
派手に戦ってる所には混ざれない人達がわたしたちを狙う。キリーの肩に着地したところで、作戦を練ったらしい敵が三方向からやってきた。
「こ、こせい…っ!」
悲しい匂いと共に、まわりが霧に包まれはじめて、これがキリーの個性なんだってわかった。なんで悲しい匂いがするんだろう。わからないけど、霧の中にいる敵から小さな悲鳴や呻き声が聞こえてきた。それが聞こえてくるとさらに悲しい匂いが強くなる。もしかしたらキリーは自分の個性が好きではないのかもしれない。
動きが止まった敵のポイントを取りにいこうと足に力を入れる。すると今までのキリーでは考えられないくらいのスピードと力で体を抑えられる。
「だめ…っ!」
どうやら霧の中に入ってはいけないらしい。無理にとる必要はないから、嫌がるならやめとこう。
「みゃー。」
行かないよ、ということを伝えるためにそっと顔にすり寄る。すると少し悲しい匂いが薄くなった。
「大丈夫!?」
少しずつ霧もはれてきてるようだったし、キクの元にふたりで合流すると、さっきの様子を見てたのか心配の匂いがすごくする。
「うん、なんとか。逃げてこれたよ。」
キリーの返事に同意するように、そっとキクの肩に乗り移れば優しく撫でてくれる。猫の撫でかたを熟知しているからか、すごく気持ち良くて居心地がいい。
「TimeUp!そこまで!」
最後までデクとカツカツとひえひえは白熱した戦いをしていたけど、あたしたちは変わらず点数は取られることなく逃げ切った。
次のステージに進むことは出来なかったけど、集まった個性から考えると健闘した方じゃないだろうか。少なくとも消にぃに怒られるほどではないとは思う。
キャットフォームを解いて、キクとキリーと3人でA組の輪の中に戻る。あたしたちを見つけたツンツンが駆け寄ってきた。
「霧々!お前騎馬戦ちゃんと組めたんだな!遠くから見て安心した!お前らもありがとなー!」
「とんでもない。むしろこちらこそありがとうだよ。」
「切島くん、私のこと心配してくれたの…?」
「だってお前、人見知り酷いだろ?そりゃ心配はするって!」
「あ、ありがとう…。」
キリーから嬉しい匂いと好きの匂いがすごくする。こんなに分かりやすい匂いがするのに、ツンツンは全然気付いてなさそう。なんでだろう。
「…なんかふたりとも可愛いね。」
「…?」
「おい、クソ猫!」
「…なに。」
「ちゃんと俺の言ったこと、守ったんだろうなあ!?」
「カツカツうるさい。」
「あぁ!?」
「勝己くん、おつかれさま。」
「お、おう。」
さっきまで怒ってる匂いだったのに、キクが話しかければすぐにその匂いはおさまる。カツカツもあたしにしてみれば分かりやすい。
「ケガしてないよ。個性も使ってない。」
「勝己くん、心配してくれてたの?」
「うん。」
「なんでテメェが返事すんだよ!」
「違うの?」
「…っせぇ。」
やっぱり素直じゃない。なんでだろう。
「ほら、お前らさっさと戻れ。」
「相澤せんせー。」
「俺は寝る。」
「あたしも。」
「お前は飯を食え。午後に備えろ。」
「午後出番ない。合理的。」
「ちっとも合理的じゃない。出直せ。」
背後から消にぃが歩いてきて、私の頭を軽く小突く。みんなに戻るように言うのに、戻る様子は見ないでさっさと進んでいくところが消にぃらしい。
「うっし!飯食おうぜ!」
ツンツンの言葉をきっかけに、みんな食堂に向かい出す。魚定食あるかなあ、なんて思いながら、消にぃの寝床にどうやって忍び込むか作戦を練り始めた。
writtten by にゃぽん
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