02.いない人
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ガラリとドアを開けて入ってきたのは鬼龍で、丁度よかったと言いながら守沢に声をかける。
「流星隊さんの衣装修繕なんだがな、ベルトの部分が俺一人じゃどうにも上手くいかねぇんだ。
今日はせっかく部活に行けるんだろうから明日辺り相談させてくれ」
ああ、わかった!と返事をしてから守沢は、はたと立ち止まる。
「なまえが…鬼龍となまえだったら去年のように上手くいったんだろうか…?」
「…そうだろうな。だが、今いねぇやつの話をしても意味はない。早く戻っくりゃいいのによ…」
あぁ、そうだなとだけ小さく返して守沢は部室へ向かう。
その背中を眺めていた鬼龍には元気いっぱいなはずの守沢が、ひどく憂いを帯びているように感じられた。
不思議な少女から隊長へ紙袋を届けるというミッションを課せられた仙石は、隊長こと守沢を探していた。
教室にはいなかったので、部活動だろうか?バスケ部の活動場所である体育館へ移動しつつ、先程の少女について思案する。
「(しかし先程の女の人は誰だったのでござろうか…?とても優しげなのにどこか儚い雰囲気の御人でござったけど。)」
そうしているうちに体育館まで辿り着き、中を確認すると同級生であり流星隊の仲間である高峯翠が探していた守沢達と一緒にバスケをしているところだった。
ブザーが鳴り、ひと休憩入ったタイミングを見て仙石は声をかけた。
「隊長殿!預かり物でござるよー!」
「お、仙石か!態々ありがとう!しかし誰からだ?」
誰からかと問われ一瞬黙る仙石に守沢は首を傾げたが、飛び出してきた言葉に固まった。
「女の人だったんでござるが、名前を聞いたら逃げられたのでござるよ…。
隊長殿を千秋と呼んでいた、3年生のプロデューサー科の人らしいでござる。
髪が長くて、拙者より小さかったでござる。」
近くで聞いていた高峯が人見知りなのによく頑張ったね、などと仙石と話していたところで守沢はいつもとは打って変わった雰囲気で黙って紙袋の中を覗いた。
中には直方体の白い箱が5つ。それぞれに色の違う丸いシールが貼られている。
おもむろに赤のシールが貼られている箱を選んで開けてみると、中には先程鬼龍から製作について相談したいと言われた衣装のベルトが入っていた。
新しく作られたそれの革はまだ固く、金属で出来た星の飾りが曇りひとつなく体育館の灯りを反射してキラリと輝いている。
じいっとそれを見つめていた守沢は顔をあげて、いつもより静かなトーンでこれを持ってきた仙石に問いかけた。
「…仙石、これを持ってきた女の子はどこに?」
「裏門から帰っちゃったでござるよ…。
やっぱり拙者、お名前だけでも聞いておくべきだったでござるか?」
その必要はない、ありがとうとだけ伝えてベルトを箱に戻しながら物思いにふける。
「(なまえ…。今どこにいるんだ…?学校にいたという事は来るつもりがあるのだろうか…?
…とにかくお礼を言わなければいけない。このベルトもそうだが、去年のあの頃のことも…
…会わなければ。会って、伝えるべき事がある。)」
紙袋に箱をしまってからというもの微動だにしない守沢を見て、高峯が声をかけるといつもの調子に戻る。
「あの…守沢先輩?いつもより静かで不気味なんスけど…?
明星先輩達が1on1やりたがってるんで行ってきてください。」
「ああ、すまない。行くとしよう。仙石、持ってきてくれて助かった。」
おーい!と紙袋を体育館の脇に置いて明星の方へかけていく守沢を見て高峯と仙石は今日の守沢先輩は変だったよねと意見をあわせてから仙石は体育館を出て、高峯は部活に戻った。
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