女王の休息と姫の焦燥


「んー!おいしい!」


夕食時の暖かな賑やかさが私達を包む。
ゲームセンターで遊び尽くした後、夕飯は何が食べたい?となり、王女のリクエストで寿司屋に来た。


一皿百二十六円からとか微妙な値段だな。


大好きな寿司を目の前にして、王女のテンションは最高潮に達したらしく、あのネタは何、このネタは知っているだのと相手をしてくれない不二子さんに変わって私に話しかけてきた。

王女が無邪気ですごくかわいい……!不二子さんもうちょっと相手してあげようよ!?そんな外気にするかね!?いや気にするか!!でも意外と大丈夫そうよ!?

原作見てるからね!とは言えないからそんなに外気にしなくて大丈夫ですよとは言えない。

私も久しぶりの日本だしと、小さい頃好きだったマグロや納豆巻き、かっぱ巻きを堪能する。やっぱり美味い。

不二子さんは依然外を見てばかりで、寿司なんてろくに食べていない。
マグロを口に詰めながら、不二子さんも食べないのかな、と思っていると、王女が口を開いた。


「外ばかり気にしてるね」


あ、これは原作でのセリフ……私混ざっちゃだめなやつか……!


「普通するでしょ。王女様を誘拐してんだから」

「美味しー!あ、ねぇねぇ、あれ何!?」

「え、あれは穴子です!美味しいですよ!」

「本当!?……本当だわ!美味しいー!」

「あなた達、もうちょっと人質っぽくしたらぁ?」

「はぁーい、」

「え、待って私も人質なんですか」


今聞き捨てならな事を聞いた気が。


「食べたお皿は、戻しちゃだめ」


え、あ、スルーですかそうですか。


私までも人質とかとんでもない事を聞いた気がするが、きっと冗談だろう。冗談でないと困る。切実に。
ただでさえ安室さんと赤井さんとコナン君に迷惑をかけているのに、人質になって更に迷惑になるのはごめん被る。

まぁ危害を加えられるって事はないだろうけれどね。


「目的は分かんないけど、あなた達は悪い人じゃない。……それとも、教えてくれる?脚長お姉さんと喪服のお姉さんの本当の目的……」

「ちょ待て、私さっき人質って言われましたし喪服って」

「……」


不二子さんは黙っちゃったし、王女は寿司を堪能しまくっていて、私のツッコミには誰も反応してくれない。悲しい。
待ってよ私も人質って言われたのに!!

そんな思いも虚しく、セリフは原作通り進んでいく。
私という異端者が混ざった事により多少内容は変わっていたけれど。


「ほら黙った」


寿司を飲み下した後、少し得意げな顔で王女は黙った不二子さんを見つめる。
かわいいなぁなんて思っていると、王女の口の端にご飯粒が付いてるのが目に付いた。


あ、これ……。


「でも、もう信じるって決めたから。お姉さん達と、私の直感を……!」


すごく良い笑顔。しかし口の端にはご飯粒。なんとも言えない雰囲気。
そしてかわいい。気付かない王女かわいい。
ニヤニヤを必死に耐えていると、不二子さんはご飯粒についての指摘をして王女は顔を赤くした。


「フフ……王女かわいい」

「あ、あなたも気づいてたの!そうなら早く言ってよー!」

「だからお皿戻さないの」


久しぶりの自由で少しばかり幼くなった王女に嬉しく思う。
今は存分に自由を楽しめば良い。
そしてあなたの、本当の居場所を見つけて欲しい。


本当の帰る場所に帰れない私からの、少しばかりの願い。

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