
女王の休息と姫の焦燥
「次!次これやりたいの!」
そう言ってUFOキャッチャーの次に来たのは、不二子さん曰くプリクラ機というやつだった。
何やら写真が撮れるのだとか。
メイクバッチリな女の子達が印刷された暖簾的なものを潜り、中に入ると緑色の布とカメラ、そしてまた大きめの音楽。
三人収まると急に女の子の声の案内がして、私と王女は飛び上がってしまった。お、驚かせるなよちくしょう……!不二子さん笑ってるし慣れてるのかなこの人……!くそう……!
カシャンカシャンと小気味よい音を立ててコインが投入されていく。
不二子さんは最後の一枚を入れる前に、ふと手を止め、私達を見てきた。
「ここからはスピードだから、頑張ってついてきてね?」
「……へ?」
「どういう事……?」
「プリクラっていうのはスピード勝負なのよ、入れた瞬間から始まっていきなり撮られるから気をつけて。ほら行くわよ!」
「え、あ、ちょ、」
「ま、待って心の準備が!!」
王女と私があたふたするのを面白そうに見た不二子さんは、最後のコインを投入し、突然始まったプリクラの案内に臆する事なく笑顔で画面をタッチしていく。
私と王女とはと言うと不二子さんが何をしているのか全くついていけず、二人手を握り合って不二子さんの動向を見守るしかなかった。
「はい、そこのカメラ見て!」
「え、え!?」
「えあ、ちょ、あ」
カシャ、と軽い音を立てて女の子の声と共に写真を撮られる。
そしてまた一枚、また一枚と何枚か立て続けに撮っていった。
不二子さんは次々とポーズを変えて美しく写っていたが、私と王女はワタワタとしていてポーズも何もない。
結局私と王女がまともに写れたのは一枚だけだった。けれどうん。最初のカメラを探して飛んだり跳ねたりしてしまった時よりかはだいぶ進化している。
私も王女も笑顔でしっかりカメラ目線。
これだけ見ると王女は本当に普通の女の子のようだった。
しかし彼女は王女。いずれ帰るべき場所へと帰り、彼女のやるべき事をやらねばならない。
たった十九の女性が。とは少し心配になるが、その心配すら彼女からしたらただの枷になるであろう。
今はただ単純に、彼女の傍で楽しむ事をすれば良い。そして彼女が帰るべき場所へと帰った時、気持ち良く送れば良いのだ。
それならば私の帰るべき場所は……?
ふと暗い感情が腹の下からフツフツと湧き上がる。
私は別世界から来た異端者。
王女は他の国からの来た、帰るべき場所がある人。
私は……ここで本当に生きてるの?
「ちょっとー!落書きっていうのするわよ!早く!」
「っ……あ、」
王女の声で反応すれば、不二子さんと王女はすでに落書きコーナーという場所へと行っていた。
早く早くと急かされ、先程までの暗いわだかまりは少しは解けた気がした。
「はーやーくー!」
「はーい!」
今は考えたって仕方がない。
帰れないのならば帰れるまで待つしかない。深く考えたって今は自分を追い込むだけ。
けれど頭では分かっていたってどこかで叫んでいる。
何故私はここにいるのと。
今までの私の戦いは何だったのと。
セブ達は。仲間は。彼らの死はなんだったのと。
私が本の中の住人なのならば、あれらの出来事は全てフィクションだったのか。
私の努力は、人生はなんだったのか。
腹の底でドス黒い小さなわだかまりを残したまま、私は王女達の元へと急いだ。
私からしたら、彼らも同じような境遇だと気づかないまま。
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