コンサート当日、めかしこんで来てくれたファンの子たちにサービスしつつ、彼女を探す。たしかこの辺り……、あ、いた。幸いなのか、周りに俺の担当の子はいなかった。俺は君にファンサしてるよってのが分かりやすくていいよね、こういうときって。俺のうちわ持ってくれてる彼女に指差しをして笑顔を見せる。彼女も照れくさそうに笑ってくれてそれが凄く可愛かった。
『終わったら楽屋来て』
無事にコンサートが終わり、楽屋へと戻る最中、ふと、彼女にそんなLINEをしたことを思い出す。来てくれるかな、どうかなって勝手に胸を躍らせている自分がいて、なんだか恥ずかしい。
松村「お疲れ様です」
ちらと顔を覗かせたのは北斗だった。そしてその後から「お疲れ様です」と彼女の声が聞こえた。
深澤「おい北斗彼女連れかよ!」
松村「違いますよ」
佐久間「あれ、名前ちゃんじゃん」
「こんにちは」
深澤「何、知り合い?」
佐久間「北斗の妹でぇー、俺の好きなアクセサリー屋さんの店員さん」
深澤「へえー」
そんな話をしてる中、なんとなく輪に入れないまま彼女を見てたらぱちっと目が合った。せっかくだからそれをきっかけにして彼女の元へ近寄る。先に声をかけてくれたのは彼女の方だった。
「照くん、今日はありがとうございます」
岩本「いや、楽しんでもらえた?」
「とっても!」
岩本「なら良かった」
松村「え、お前いつから岩本くんのこと名前で呼ぶようになったの」
「少し前から」
ひそひそと話す松村兄妹の会話が微笑ましくてつい笑ってしまう。それと同時にふっかが俺の耳元で「あの子のこと好きなの?」って茶化してきた。こいつなんでそんな勘ばっかり鋭いんだろ。やだわー。
岩本「まじふっかうるさい」
深澤「へー、否定しないんだ」
にやにやと笑うふっかをよそに「そろそろお暇します」と話す北斗。別にまだいてもいいけど、まあ、次の公演もあるからそう長くはいれないか。
岩本「来てくれてありがと」
「ううん。私の方こそありがとうございました。本当に楽しかったです! この後も頑張ってね」
岩本「ありがと」
くしゃくしゃの笑みを浮かべて2人を見送る。2人が去った後の楽屋では、俺の片想いが全面的にメンバーにバレたらしく恋バナで盛り上がってた。もうほんとやだ!
拗ねて端っこにいると「ほら岩本くん拗ねちゃったじゃん」とラウールが話してた。お前も盛り上がってたろ。
その日の夜、家に帰ってからやっと彼女からのLINEに気付いた。
『今日お疲れ様でした。そういえば照くん指差し? してたよね?』
『気付いた? あれ名前ちゃんに向けてやったやつ』
『え、そうだったの?』
『うん。あの辺り、俺のファンの子いなかったし』
『貴重なものいただいてしまった……!』
『何それ(笑) 俺のうちわ持っててくれたの、凄い嬉しかったよ』
『持ってたらいいってネットに書いてあったから』
『調べたんだ(笑)』
『調べた(笑)』
ちゃんと気付いてくれてて良かった。ただそれだけが嬉しくて、この後の公演も頑張ろうって思えた。