蜂蜜はたっぷりお願い

今日は樹んちで宅飲み。なんでかって言われると別に何ででもないんだけど、まあ、なんとなく。慎太郎と3人で。でけえ男3人でむさ苦しい飲み会だなと思いつつも男しかいない気兼ねない感じは嫌いじゃなかったりする。

「あれぇ、電気ついてる」
渡辺「えっ」
森本「名前じゃん!」
「たろ〜! 元気ぃ?」

ガチャリとドアが開いたと思えば、スーツ姿の彼女が入ってきた。頬が真っ赤に染まっていて、語尾が緩く伸びてる感じをみると、飲み会帰りかなんかなのか。慎太郎の横にすとんと座って話し始める。

田中「名前、水」
「ありがと〜。樹今日泊めて〜」
田中「ん、いいけど」
森本「何飲んできたの」
「んふふ、日本酒」
森本「えっ、名前日本酒飲めんの!?」
「ちょっとだけねぇ」
田中「名前、着替えてきたら」
「ん」

ふらふらと立ち上がって寝室へと消えていく姿を見送り、くだらない話に花を咲かせる。

森本「名前可愛くなった?」
田中「ずっと可愛いわ。てかそんな目で見んな」
森本「え? しょっぴーだってそう思うっしょ?」
渡辺「俺に振んなよ」
森本「彼氏いんのかな」
「いないよ」
「「「えっ」」」
「会話丸聞こえ」
森本「うわ、はっずー」

絶対思ってないなこいつ。けらけら笑いながら「名前も飲も」って誘ってちゃっかり自分の横に座らせんの。

森本「彼氏欲しくない?」
「欲しくなくはないけど」
田中「ねえ俺の前でそんな話すんのやめて」
森本「俺とかどう?」
「えー」
森本「じゃあしょっぴーは?」

おい、まじやめろ。俺に飛び火させんな。

「んー、ふふ」

ちらと俺の方を見て、すぐに目をそらす。彼女は笑って誤魔化した。何それ。どう捉えりゃいいの。

田中「まじでやだ。ジャニーズと付き合うのなしね」
「勝手に決めないで」
田中「まじやなんだって」

レモンサワー片手に「そんな事言われても」と笑う彼女。「じゅり〜」と少し甘えた声を出して「アイス買ってきて?」なんて可愛くおねだりしてた。

田中「何味のやつ」
「チョコミント」
田中「しょーがねえなぁ」

妹に良いように使われてる樹の姿はちょっと見てて面白い。慎太郎なんか腹抱えて笑ってるし。財布片手にコンビニへ向かう樹を見送る。

「渡辺さん、LINE教えてください」
「「えっ」」

俺だけじゃなくて横にいた慎太郎も驚いてた。

「樹がいたら絶対ダメって言うでしょ?」
渡辺「たしかに」

妙に納得してそのままLINEを交換した。「たろ、樹に言わないでね」と慎太郎に口止めしつつ「翔太くんって呼んでもいいですか」なんてぐいぐい距離を縮めてくる彼女に不覚にもドキリとした。

「ふふ、やった」
森本「やったね」
「今日やなことあったけど、翔太くんの連絡先知れたからチャラになった」

くすくす笑いながらそんなこと言われたらなんかちょっと意識してしまう。この子俺のこと好きなのかなって。自惚れだったら恥ずいから言わないけど。

森本「何あったの?」
「んー、会社の人に告られた」
「「えっ」」
田中「ただいまー」
「あ、おかえり、樹」
田中「アイス、これでいい?」
「うん! ありがとう」

話の続きが気になったのに、樹の前ではさすがに聞きづらくて慎太郎と顔を見合わせた。