アンチヒーロー

田中「んで、どーなったの」
「……付き合うことになった。正式に、告白、しました! 翔太くんと、お付き合い、します!」
田中「……まじで? ねえ、まじで?」
渡辺「まじ」
田中「……よりにもよってしょっぴーかぁ。……いや、慎太郎じゃなかっただけ、マシか。いやでも、しょっぴー……」
渡辺「なんだよ」

樹は名前のこと、ぎゅうって抱きしめて離れなくて、少しだけ妬いた。俺が彼氏なんだけど。

「樹暑いんだけど」
田中「やだ。絶対離さない」
「樹」
田中「やーだー」
「……今日だけだよ」

名前の首筋に頭埋めて「あーあ、俺の名前がぁ……」って呟く樹。ちら、と俺の顔を見て「いつから」なんて野暮なことを聞く。

渡辺「俺は……、こないだ。名前を、家に、呼んだ時」
「え、遅っ」
渡辺「うるせえ」
田中「名前は?」
「……たろもいて、4人で飲んだ時。あの日、会社の先輩に、告られて……。そんときに、なんでか、翔太くんの顔が浮かんだんだよね。それで、好きな人がいますって断って、それから意識するようになった」

樹の頭を撫でながらそんなことを話す名前。なんか急に全身の体温が顔に集中したみたいに熱くて、そんな姿を見られたくなくて顔を背けた。

田中「しょっぴー照れてんじゃん」
渡辺「照れてねえよ」
田中「……まあ、俺がどーこー言うあれでもないけどさ、1個だけ」


そう言って樹は名前から離れた。俺の方をじっと見て「名前泣かせたら、相手がしょっぴーだろうとなんだろうと、許さねえから」って。田中家の総力を上げて潰しにくるみたいな勢いで言われて「んなことしねえよ」って笑って返してやった。