2024.02



「ひかる、指立ってる」
「え? あ」

主演ドラマが決まったって、そう話をされたのは少し前のこと。「おめでとう」とは口で言ったものの、また恋愛ドラマかぁと内心ヤキモキしたのは事実で。モエカレのときみたいに抱え込む前に今度はひかるにその気持ちを吐露した。そしたら彼は嬉しそうに笑って「かわいい」って。楽しんでるなーと思ってたら、意外と考えはしてたのか少しの時間でもふたり一緒にいることを提案してくれた。もちろん、ひとりの時間も大事だってことでお互い事前承認制みたいな感じなんだけど。

「こないだも言われたんだよね。手」
「癖強いからね、ひかるの手」

台本片手にリビングをぐるぐると回っているひかるを捕まえて、骨ばったその手に触れる。

「そこがかわいいんだけどね」
「大真面目なのに」

ひかるの手に頬擦りをして自分の手を重ねれば、ぐいと体を引き寄せられる。

「あれ、そういうシーンだった?」
「違うけど、抱きしめたくなった」
「指、また立ってる」
「いいの。今は辰之助じゃなくて俺だから」

ふわりと香るひかるの匂いが少しだけ私の匂いと混じって甘くなってることがなんだか嬉しくて、私も彼の背中に手を回した。

「あとちょっとだけ、こうしてていい?」
「ん、ふふ。俺も今言おうと思ってた」

照れくささを隠すように彼の胸に顔を埋める。ひかるが私の頭を撫でる度くすぐったい幸せが溢れて、離れたくないなぁって子供みたいなワガママが浮かんでは消えた。

「ねえ」
「んー?」
「今日泊まってっていい?」

顔を上げると気恥しそうに笑うひかるが映る。明日早いからって言ってたのはひかるだったのに。でも、私にそれを拒む理由なんてない。大きく首を縦に振って「うん!」と元気の良い返事を返して笑った。