嶺亜のいたずら

久しぶりに嶺亜から「明日暇ー?」と誘われたのは昨日のこと。仕事終わりに事務所へと向かう。嶺亜は雑誌の撮影があるって言ってたっけ。
ソファに座りスマホを弄っていると暫くして「お待たせー」と嶺亜がやってきた。

嶺亜「奏依さあ」
「んー?」
嶺亜「最近大光と喋った?」
「…いや? プリン食べた時以来会ってないかも」
嶺亜「こないださ、大光が奏依と喋んの気まずいって言ってたんだよねぇ」
「え、私なんかした?」
嶺亜「ほら、大光も思春期だからさ」
「思春期ねぇ……」
嶺亜「今度見かけたら声掛けてみてよ、絶対面白いから。なんなら今から電話する?」
「え。……ん、まあ、いいけど」
嶺亜「んじゃかけるね」

事務所内にスマホの呼出音が鳴り響く。少しして電話が繋がり、眠たそうな大光の声が聞こえてきた。

佐々木「……はい」
嶺亜「もしもーし」
佐々木「何?」
嶺亜「今何してんのー?」
佐々木「寝てた」
嶺亜「そーなんだ。じゃあ、代わるねー。はい」
「え、え? このタイミングで?」
嶺亜「うん。スピーカーにして」
「あ、はい。……えーと、もしもし?」
佐々木「……誰?」
「東雲だけど」
佐々木「は……? ハァッ!?」
嶺亜「あはははッ」
佐々木「何で!? 何なの!?」
「嶺亜がかけるって言うから」
佐々木「嶺亜!!!」
嶺亜「あははははッ」

嶺亜ずっと笑ってるし。止める気もなさそう。てか誰よりもこの状況を楽しんでる。確信犯だよ。

「大光、元気?」
佐々木「ん、まあ……」
「ご飯食べてる?」
佐々木「おう……」
嶺亜「お母さんかっ」

少しの間沈黙が続く。何話せばいいんだろ。面と向かって話すのと感覚違うし、電話ってちょっと不得意かも。悩む私をよそに、沈黙を破ったのは大光の方だった。

佐々木「……お前、本当に女なの」
「え? まあ、はい」
佐々木「俺なんて呼べばいいの」
嶺亜「そこかよ」
「何でもいいよ」
佐々木「……東雲? 東雲〜!」
「何?」
佐々木「あー…えと、嶺亜と、付き合ってる……わけ、じゃない?」
嶺亜「あははははッ、ないないない!」
「それは絶対ない」
佐々木「嶺亜は知ってたとか……」
嶺亜「ぜんっぜん! 俺だってニュース見て知ったもん」
佐々木「……そ。んじゃ」
「え、切れた」
嶺亜「あははッ、ヤバッ」

通話の切れたスマホを虚しく見つめる。横でまだ笑ってる嶺亜に「笑いすぎ」と言えば嶺亜は目じりに滲んだ涙を拭って私を見た。

嶺亜「だって超面白いんだもん、笑うでしょ」
「今度、ご飯行く時大光連れてきてね。嶺亜の奢りで肉食べるから」
嶺亜「はー? ……じゃあ7MEN全員呼んでじゃんけんにしよっか」
「それはそれで楽しいからOK。絶対負けないし」

そう息巻いたものの、いざ全員揃えてのご飯会でじゃんけんをしたら、速攻負けて支払うはめになったのはまた別の話だ。


top