ファンの子とその想い
「あ、あの! 奏依ちゃん、ですか……?」
目の前には私より10cmは背が低い小柄な女の子たちが3人。みんな制服を着てるからきっと中学生か高校生なのかな。
「あ、はい。Snow Manの東雲奏依です」
「わぁ! あ、あの! ファンです!」
「ありがとう、嬉しいです」
握手を求められそれに応える。3人ともと握手してから話を聞くと、それぞれに翔太くん、照くん、めめのファンらしい。でも3人とも口を揃えて「推しコンビは自担と奏依ちゃんです!」って言ってくれて、それだけで凄く嬉しかった。
彼女たちと別れると、さっきまでの様子を見てた別の子たちが私を囲む。道のど真ん中だったからちょっと端に寄ってもらった。それが何回か続いて、もう何人目か分からない女の子たちが私の前に並んだ。
「あの、私、奏多くんのこと、ほんとに、大好きで」
その言葉に少しだけ胸が痛んだ。だって、好きだった男が実は女でしたなんて、きっとびっくりなんて簡単な言葉だけじゃ済まされない思いに包まれるだろうから。
「だから、奏多くんが、女の子って知って、ほんと、どうしていいか分かんなくて」
ただ話を聞くことしか出来ない。彼女の隣に立つ友達はただただ困った顔してて、それも心苦しかった。
「でも、女の子って発表してからも、ずっとかっこよくて、私の大好きな奏多くんで、奏依、ちゃんで、前と同じくらい、もっと、好きで、大好きで……」
泣きじゃくる彼女をあやすことすら出来ない。
「だから、だから……! これから、も、ずっと、ずっと応援してます……! 私の中では、まだ奏多くんは奏多くんで、まだ、上手く言えないけど、でも、大好きです」
真っ直ぐと私を見つめてそう話す彼女。どう言葉にしていいか分からなくて、とりあえず彼女の手をとった。
「……ありがとう。奏多を好きでいてくれて」
私も上手い言葉は出てきそうにない。ただそんな一言でまた彼女はぶわっと大粒の涙をこぼして、頷いてくれて。
「泣かせてばっかりだね。……次会うときは、笑ってね。その方が可愛いだろうから」
彼女の涙を指で拭い、努めて優しく微笑む。彼女は何度も首を縦に振って頷いてくれた。
隣にいた友達が「そろそろ時間やばいよ」と口にすると、捲し立てるように「絶対! 絶対会いに行きます!」と話して、彼女たちは去っていった。
適当に歩きながら彼女のことを思う。奏多が好きだった人は今の私を見てどう思うんだろう。……奏多だから出来たことも沢山あったけど、奏依だから出来ることもきっと沢山あるはず。自担が最高って言ってもらえるように、もっともっと頑張らないと。