ラウールと面接練習
YouTube撮影の合間、ラウールが私の隣に立って「奏依ちゃん」と声をかけてきた。「何?」と聞くと、子犬みたいな顔をして「次の撮影まで時間あるよね?」と尋ねてきた。一本目を撮り終えて、次の出番は今撮り始めたものの次の次だから時間は有り余ってる。「うん」と首を縦に振れば、彼はぱっと顔を明るくさせてさらに口を開いた。
ラウール「じゃあじゃあ、俺に付き合ってくれない?」
そう言ってラウールは私を休憩所へと連れ出した。向かい合わせに座って「どうしたー?」と声を掛けると、彼は「あのね」と言葉を紡いだ。
ラウール「実はもうすぐ面接があるんだけどー……、その練習、付き合ってもらえないかな?」
「こう見えて受験生だもんね。ん、いいよ」
ラウール「こう見えて」
「んふふ」
仕事してるとラウールが高校生なの忘れちゃうんだよね。大人びてるからか、私が子供っぽいだけなのか。
ラウール「面接はリモートなんだけど、とりあえず最初だから対面でもいいかな?」
「うん、分かった。面接官って複数人とかじゃなくていいの?」
ラウール「大丈夫! 面接も1対1って聞いてるし」
そうなんだ。……そういえば、私も大学入試のとき面接あったなぁ。その時は複数人での面接だったけど。
「ちょっと待っててね」と休憩所の端にあったペンとメモを取り出す。この方が面接っぽくない?
小さく咳払いをして、ラウと向き合う。「いつでもいいよ」って彼は背筋を伸ばして待機した。
「じゃあ始めるね。自己紹介と志望動機をお願いします」
ラウール「はい! 村上真都ラウールです」
元気な返事をして彼は名前と学校名を話した。そして、ゆっくりと志望動機について話し出す。それをうんうんと頷きながら聞いて、気になった点をメモしていく。一通り話してもらってから、気になった点を問い詰めていく。「村上さんはこう話されてましたが……」って、気持ちはもう完全に面接官で。「あっ」とか「えーっと」とかってラウールが口ごもる度に、内心ごめんねって思ったけど。
「ちょっと休憩しよっか」
ラウール「うーん……、ごめん」
「大丈夫だよ」
私が大学受験するときの練習はもっとダメダメだったから。それに比べたら全然良いけど、でもまだ完璧ではない。荒削りなとこが多いかもしれない。よしよし、とラウールの頭を撫でてあげる。少し休憩して、また面接練習を再開する。いつの間に考えたのか、さっき私が質問したところもしっかりカバーして答えるラウール。地頭の良さに感心してしまう。
「以上で面接を終えます」
ラウール「ありがとうございました!」
しっかりとお辞儀をするラウール。つられて私もお辞儀をする。すぐに面接を振り返っていると、ひょこっと阿部ちゃんが顔を出した。
阿部「あ、いたいた。2人とも、もうすぐ次の撮影始まるよ」
ラウール「はーい!」
阿部「何してたの?」
「ラウの面接練習」
阿部「あー、もうそんな時期かぁ。奏依のときもやったね」
また懐かしい話を掘り返す。「その節は大変お世話になりました」と深深お辞儀をすれば阿部ちゃんはくすくす笑った。
ラウール「奏依ちゃんのときって、どんな感じだった?」
「え、うーん」
阿部「練習中はずっと顔強ばってたよね」
「そうだったっけ?」
阿部「うん。その顔が凄く面白くて、忘れられないんだよね」
「今すぐ忘れて?」
どうやったら忘れてもらえるか。デコピンでもしてみようか。そんなことを考えてたら、後ろからラウールがぎゅうっと私を抱きしめてきた。
ラウール「僕抜きで話しないで!」
甘えたなラウールを引きずりながら現場へと戻る。最近また身長も伸びて、どんどん大きくなっていく彼がまだ甘えてくれることが嬉しくて、つい顔が綻ぶ。
こっそり耳元で「また練習付き合ってね」と言ってきたのは2人だけの秘密らしい。