ある日のしのじゅり

そういえば、マネージャーさんがファンレター溜まってるって言ってたなあ、なんてことを思い出して仕事終わりにふらりと事務所へ立ち寄った。何人かのJr.に挨拶されて返して、視線の先に見つけた樹の方へ足を向けた。

「樹、元気?」
田中「あ? おー、奏依じゃん」

よっ、と手を挙げたかと思えば、ぺしぺしと自分の隣を叩いてここに座れと指示してくる。そういうの翔太くんもやるんだよね。しかも、座るまでやめないし。大人しく樹の隣に腰かければ「最近北斗となんかいろいろ撮ってんだって?」と投げかけられた。

「うん、まあ、おかげさまで」
田中「どんな感じ?」
「え、すーんごい緊張する」
田中「それ北斗も言ってたわ」
「え、ほんとに!?」
田中「手汗ビッシャビシャよ、俺つって」
「あんなに澄ました顔してんのに……」

本当に撮影中の北斗くんはすんと澄ました顔でいて、ふとした時にはにかんだ表情を見せて女性スタッフを虜にしてる感じなんだよね。だからそんな手汗ビッシャビシャになってるとは思ってなかったんだけど。北斗くんくらいになったら汗腺も自由に操れるのかな。

田中「まあ、マンズ兄さん達の手前、粗相もできねえしなぁ」
「粗相はしないでしょ、そういう作品じゃないし」
田中「え、やっぱねぇの! えっちなシーン!」
「ないよ! てかデカい声でそんな事言わないでよ」
田中「いやだってなんか前出たドラマすげーエロかったんでしょ?」
「言い方が悪い。ちょっと大人な恋愛だっただけですー」
田中「俺もドラマの仕事とか来ねーかな」
「きてたじゃん、日曜劇場」
田中「あー、まあね。それはそうなんだけど、なんかこう……」

そう言って黙り込む樹。日曜劇場だって立派なお仕事だし、樹がやってたマラソンランナー、滅茶苦茶ストイックでかっこよかったと思うんだけど。

田中「俺も盛大にそういうシーンがある役をやりたい」
「あー…………?」

なんだろう、なんか嫌だな、その発言。

田中「何その顔。俺がそういうのやるの嫌?」
「いや、嫌っていうか……うーん……」
田中「相手が奏依だったら?」
「……想像もつかない」

本当に想像もつかない。うーんと考えてると、遠くからSixTONESのマネージャーさんが樹を呼んだ。

田中「だぁ呼んでるし行くわ。んじゃ、また」

ぽんとさりげなく私の頭を撫でて樹はそのまま去っていった。こういう何気ないシーンだけ切り抜いたらすぐにでも恋愛ドラマの主人公になりそうなのにと思ってしまう。まあでもその時は、ヒロインじゃなくて1視聴者としてドラマの行く末を見届けたいんだけど。


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