ある日のたろしの
森本「おーっす」
「おはよ」
元気のいい挨拶とともに「ここいい?」って聞いてきたのは慎太郎。てかまだ夏前なのにもう半袖半パンじゃん。寒くないのかな。
森本「てか事務所で会うの珍しくない?」
「そう? あ、でも慎太郎と会うのは珍しいかも。樹とかジェシーはよく会うよ」
森本「まじ? いいなー。あ、そういやあれ! あれ見た! 口裂け女のやつ!」
「ありがとう。どうだった?」
森本「奏依と北斗が一緒に主演やってるってなんかすげー嬉しいけどなんか、なんか」
「何?」
森本「いやなんか、言葉にできないんだけどさ、うわー! ってなった」
「なにそれ」
身振り手振りを交えて教えてくれるけど全然伝わらなくて。ただ慎太郎の熱量だけはありありと伝わった。
森本「てかさ、奏依だいぶ髪伸びたね」
「あー、まあ、役でね。それこそ北斗くんと出てるドラマの方、まだ撮り終わってないから」
森本「へー。……なんか、女の子みたい」
「みたいじゃなくて女なんですよ、慎太郎くん」
森本「昔の髪短くて俺らと馬鹿やってたときの奏依と同じ人間に見えないっていうかー……」
慎太郎の言葉が途切れる。くしゃりと困ったように笑いながらさらに彼は言葉を続けた。
森本「ひとりだけ大人になってる感じがする」
「なにそれ、そんなことないよ」
あまりにも真面目な顔して言うから何かと思えば。
森本「だよな! そうだよなー!」
慎太郎の安堵の表情につられて笑う。
「私だって、あんなにちっちゃくて可愛かった慎太郎がこんなでっかくなるなんてあの頃は思ってなかったよ」
森本「あはは! あの頃の俺、めっちゃ可愛かったもんね」
「そうそう。でも中身はずっと慎太郎のまま。それは変わんない。私だって一緒だよ」
森本「そっか、そうだよな。うん」
何度も首を縦に振って頷く慎太郎。しばらくしてSixTONESのマネージャーさんが迎えに来て彼は席を立った。
森本「あ、奏依」
「んー?」
森本「今も昔も変わんないけど、今の方が綺麗だから。マジで」
「えっ」
森本「そんだけ。じゃね!」
言い逃げしてすたこらと去っていく慎太郎の背を眺めながら小さくため息をこぼす。
「今の方がかっこいいのは慎太郎もなんだけどなぁ」
その言葉は誰にも届かず静かに空に溶けた。