これが最初で最後の恋


すやすや眠る彼女がしばらくして目を覚ます。ふにゃりと笑って「おはよう」と呟く彼女に「おはようさん」と返す。たぶん耳まで真っ赤になっとるわ、俺。

「……なあ、ひとつ聞いてもいい?」
「ん?」
「……昨日、俺何かした?」
「覚えてないの?」
「……スミマセン」

離れようと一歩下がれば、衣都ちゃんが一歩近づく。キングサイズのベッドでの攻防をすぐに終結させて、ふたりしてそのベッドに正座する。

「康二くん、あのね」

真剣な眼差しの彼女に小さく息を飲む。

「私にとっても、康二くんが初恋です。今でも、その気持ちに嘘はなくて。……だからその、私と、付き合ってくれませんか?」
「え、ええ!?!? 待って、待ってちょっと待って!?」

ベッドから飛び降りて、辺りをぐるぐる回った。整理つかん。昨日俺何言うたん!? 酔っ払っとってなーーんにも覚えてない! 俺のバカ! 深呼吸を繰り返してもう一度ベッドに正座する。

「あ、戻ってきた」
「……昨日、俺、何か変なこと、言うた?」
「え? 別に」
「何か言うたんやろ!?」
「衣都ちゃんは、俺の初恋なんよぉ……って」

ちょっと俺の真似入っとんの。可愛い。いやいや、そうやなくて、あれ、夢じゃないの?

「あと、好き、とか」

照れながらそう呟く彼女が可愛くて、わなわなと手が震えた。抱きしめてええかな。

「もう1回、ちゃんと言わせてください」
「……はい」
「俺にとって、衣都ちゃんは本当に初恋、です。せやから、衣都ちゃんも、俺が初恋やなんて、想像つかんってか、予想外で……。だからその、えっと、末永くよろしくお願いします!」

土下座する勢いで頭を下げた。彼女はそんな俺をぎゅうと抱きしめて「顔上げて」と呟いた。勢いよく顔を上げたら、俺の頭と衣都ちゃんの顎が見事にぶつかって、衣都ちゃんはシーツに転がった。

「ごめん! 痛かったよな! すっごい音したもんな!?」
「痛い……」

涙目の衣都ちゃんに顔を寄せて、それはもう平謝りした。そしたら彼女は俺の腕を引き寄せて、その小さな唇を開いた。

「康二くんがちゅーしてくれないと治んない」
「〜〜〜ッ! そんなんいくらでもしたる! あ、でも」
「でも?」
「痛くなくなっても、やめれんかも」

そう呟いて唇を寄せた。顎やないよ、ちゃんとマウストゥーマウス。ちゅってして、何回もキスを繰り返して髪を撫でた。シーツに沈んで鼻擦り寄せて、今日が休みなのを心から喜んだのは内緒。二日酔い? そんなもんどっかいったわ。

「好き。ほんまに好き」

俺の初恋で、最後の人。

ルームシェアは約束通り解消した。
これからのふたりに待つのは同棲生活。

それと、愛おしい君に誓いのキスをするのはもう少し先の話な。





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