夢うつつ、恋うつつ


「康二くんの傷心を祝ってかんぱーい」
「「かんぱーい」」

ニコニコする友達カップルと傷心中の俺。ええんやけどね、ええんやけど、目の前でふたりがイチャイチャしだしたら俺泣くかもしらん。

「何があったの?」
「好きだった子に振られたんでしょ?」
「ふ、振られてない、けど、告っても、ない」
「あ、そうなの。じゃあなんで泣いてたの?」
「いやなんか、その子な、会社の人といい感じってか、俺近いうちにルームシェア解消されるかもわからん」

ぐびと喉を鳴らしてビールを煽る。深めのため息をこぼすとひーくんさんが「そんな落ち込むなって」と慰めてくれた。

「本当に振られたらまた呑み付き合うし」
「ひーくんさん……!」
「のものも〜」
「程々にして」

ぽんと彼女の頭を撫でて笑うひーくんさん。ふたりは俺からしたら超お似合いのカップルで微笑ましい。俺もああなりたい。たぶん無理なんやろうけど。ぐっと煽ったビールが少しほろ苦く感じたのは、ビールそのものの味だけやない気がした。

***

いつの間にかくるくると目が回っていた。視界はぐらぐらして足取りは覚束無い。左腕を支えられて、荷物も持ってもらって、タクシーに乗せられて家へと帰る。

「部屋、何階?」

呂律の回らない舌で部屋番号を伝える。そこからの記憶はない。ただ、衣都ちゃんの声とひーくんさんの声が微かに聞こえた気がした。ふわりと香る石鹸の匂い。ああ、衣都ちゃんの匂いや。

「衣都ちゃぁん……」

夢やと思った。せやから甘えた。ぎゅうぎゅう抱きしめて「好き」と呟いた。夢やからええよね、これくらい。

「衣都ちゃんは、俺の初恋なんよぉ……」

そう言えたら、衣都ちゃんはどう思うんやろ。分からん。考えるような脳も残ってなくて、そのまますっと意識を手放した。
たくさん眠った翌朝、布団の中には俺と衣都ちゃん。いつもと違うのは、彼女が俺の腕の中におさまっていたこと。





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