Envy
「今の人凄い綺麗だったね……!」
「Snow Manの東雲奏依に似てなかった?」
「あー……たしかに。でもこんなとこ歩いてないよね」
「わかる。てか忙しすぎて出掛ける暇ないんじゃない?」
俺の横を通り過ぎってった女の子たちの会話を盗み聞きしながら、待ち合わせ場所へと少し早歩きで向かう。
阿部「まあ普通いるとは思わないよね」
「……なんの事?」
こてんと首を傾げる姿はあざとい警察を招集したくなるくらいに可愛い。まあ本人は無自覚だけど。
阿部「ううん。お待たせ」
「全然。私も今来たところ」
そう言ってどちらともなく劇場へ向けて歩き出す。今日はお互い個人仕事だったから「どうだったー?」なんて他愛もない話をした。
阿部「俺、楽屋行くけど奏依どうする?」
「あー、琳寧には挨拶したいなぁ」
阿部「嶺亜は? 仲良いでしょ?」
「嶺亜はいい。誘ってくれなかったから」
阿部「ふふ、拗ねてる?」
「拗ねてる」
奏依と嶺亜が仲良いのは知ってるけど、普段一緒にいる俺たちと同じくらい、いやもしかしたらもっと素直な子供っぽい部分も嶺亜は知ってるってのはちょっと羨ましかったりする。……まあ、今は10人になってわりと歳の近い目黒とかがいるけど、奏依がSnow Manに入った当時は彼女にしてみたら皆年上でしかも強面だったからなぁ。どこかお互いに遠慮してた部分があって、それが少しずつ緩和されていってからもやっぱり、奏依は自分の子供っぽい部分を見せるのを躊躇ってたから。嶺亜とはそういうことなかったんだろうな。
阿部「じゃあ俺が楽屋行って、琳寧がいたら奏依来てるよって伝えといてあげる」
「本当? ありがとう!」
そんな話をして、俺は7MENの楽屋に入っていく。奏依は少しだけ外で待機。
阿部「失礼しまーす」
本高「わ! 阿部くん! 来てくれたんですね!」
阿部「せっかく誘ってもらったからね」
うん、全員いる。本高が嬉しそうに目を輝かせてくれるのが俺的にも嬉しい。
阿部「琳寧、ちょっと」
菅田「はい!」
琳寧に「楽屋の外に奏依いるから会ってきてあげて」と小声で教えれば彼はぱぁっと表情を明るくさせていた。「はい!」と返事をしてそのまま楽屋を出る琳寧。本高が「阿部くん、どうぞ座ってください」って言うからせっかくだし少しだけお邪魔させてもらった。
しばらくして嬉しそうな顔した琳寧が帰ってきたのを見て「じゃあ俺そろそろ客席行くね」と入れ違いで出ていく。
外にいた奏依も琳寧みたいに嬉しそうな顔をしていて「阿部ちゃんありがとう」と言ってくれた。
阿部「良かった。無事ミッションクリア出来て」
「ふふ、お世話かけました。あとは嶺亜がどんな反応するかが楽しみ」
いたずらっ子の顔をしてる奏依が可愛くて面白くて、俺までその一員に入ったみたいで楽しくなった。
ライブ中、ぱっと客席を見た嶺亜が少し驚いた顔をしていて、MC中に「なんで奏依いんの?」って話してて、俺たちは顔を見合わせて笑った。作戦成功。
奏依は終演後に楽屋へ行って嶺亜と話してた。
嶺亜「明日も仕事なんでしょ? とっとと帰った帰った」
「扱い酷くない?」
嶺亜「だって来てんのに俺らに挨拶しなかったじゃん」
「琳寧にはした」
今野「あー、琳寧いなくなってたのってそれだったんだ」
菅田「そう! 阿部くんのおかげで琳寧だけ先に奏依ちゃんに会えたんだ」
嶺亜「次からはちゃんと言ってよね」
「嶺亜が誘ってくれるんならちゃんと言うよ」
嶺亜「しょうがないなあ」
あまり遅くまでいても悪いからと、区切りを見つけてお暇した。近くでタクシーを拾って奏依の家まで送り届ける。
「阿部ちゃん、今日は本当にありがとう」
阿部「いいって。ほら、早く入りな」
「うん、じゃあまた明日ね」
阿部「また明日」
そう言って彼女と別れ、自分も家まで向かう。帰宅してすぐにソファに突っ伏して反芻するのは奏依と嶺亜の会話。もう9年も一緒にいるけど、あそこまで仲良いかと言われたらちょっと自信が無い。自分のことを良くいえば、仲間であると同時に頼れるお兄さんってところなのかなって思うけど、嶺亜とのそれは悪友に近い感じ。嫉妬に似た情けない感情に蓋をするように目を瞑る。明日はいつもと変わらない俺でいられますように。