Give me

「はい、照くん。これあげる」
岩本「ん、あんがと」

俺は見た。見てしまった。奏多が照にチョコを渡しているところを。

深澤「え、奏多。俺には?」

思わず口を出してしまう。
だって今日は2月14日。男だったら誰しもがチョコを求めて落ち着かない日。そんな日に、奏多が照にだけチョコをあげるなんて! 男同士なら特に何も言わないけど、奏多は女の子だ。本人や周りはそれを隠しているから気付かないふりをしてるけど。

「なんで?」

なんで? ってそれはこっちのセリフ! なんで照にはあげてんのに、俺にはくんないの!?
喉まで出かかった言葉を飲み込んで「いや……」と濁す。

「何? ふっかも食べたかった?」
深澤「そーじゃなくて。お前、今日が何日か分かってる?」
「14日でしょ?」

分かってた。分かっててやってんの? は? だとしたら何? 奏多って照が好きなの? はぁ?

岩本「ふっか」

今頃になってようやく照が口を開く。奏多に加勢すんの?

岩本「奏多はさぁ、新作出たらいつも俺にチョコくれんだよ。別に今日が特別とかそんなんじゃないから」
「あ、今日バレンタインデーか」

特別とかそんなんじゃないって照は言うけど奏多はどう思ってるか分かんないだろ。そう言おうとするすんでのところで、今日がバレンタインだと気付く奏多。え、こいつまじで気付いてなかったの?
深くため息をついてしまう。なんなのまじで。

「良かったね、照くん。それチョコ貰った数にカウントしていいよ」
岩本「はいはい」

返事は適当だけど照は間違いなく喜んでる。顔がにやけてるのが何よりの証拠。なんなの、何見せつけられてんの?

「んで、はい。これあげる」
深澤「え、くれんの?」

瞬きをしてしまう。奏多が差し出したのはピンクと茶色のマカロンだった。

「チョコじゃないけど、まあショコラって書いてあるしチョコにカウントしていいと思う」
岩本「よくねーよ」

けたけたと笑う照と「ダメ?」と首を傾げる奏多。いやほんとこいつ俺のことなんだと思ってんの? ……まあいいけど、貰えるんなら。なんか、すっごいチョコ欲しい人みたいで恥ずかしいんだけど。

「他の皆には内緒だからね」

しーっと人差し指を立てる奏多の小悪魔みたいな笑顔に不覚にもときめいてしまったなんて。
こんな話、先輩にも後輩にもメンバーにも言えるわけがなかった。


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