ある日の阿部くん
阿部「おはよ。あれ? 奏依は?」
岩本「まだ起きてない」
阿部「今日は……あ、休みなんだ」
冷蔵庫の横に貼ってある皆の予定表を見る。奏依は今日オフらしい。それならまだ寝てるか。あの子眠り姫だし。
岩本「そー。昨日の晩、佐久間とアニメ見るって言ってた」
阿部「ああ……。ちょっと俺見てこようかな」
岩本「奏依の部屋?」
阿部「ううん。佐久間の部屋」
きっと奏依のことだから、アニメ見ながら寝落ちしてそう。それに相手は佐久間。部屋まで送り届けるなんてことせずにアニメの続き見てたりするんじゃないかってちょっと心配だから。
とんとんと階段を上がり、佐久間の部屋をノックする。まだ寝てるのかな。
阿部「佐久間ー。朝だよー」
部屋を開けて言葉を失った。思ってた以上の光景だった。だって佐久間のベッドで佐久間に腕枕されながら奏依が寝てたから。
阿部「……ん゛っ、ん゛ん。ほら! 2人とも起きて! 朝だよ!」
何度か咳払いをしてから二人に声をかける。
「……んん、あべちゃん?」
阿部「おはよ、奏依」
「なんで、私の部屋にいるの……?」
阿部「ここ、佐久間の部屋」
佐久間「んぇ、あ。おっはー」
「……さっくん?」
佐久間「あれぇ、なんか抱き心地いいと思ったら奏依だ。んひひっ」
阿部「はい、離れてください」
2人を引き離し、そのまま奏依だけベッドから出してあげる。
阿部「ほら、着替えてきな。朝ごはん食べよ」
「はーい」
緩い返事の後、部屋を出ていく奏依。まだ眠たそうで転ばないかだけがちょっと心配。
残された俺たちの間には少しだけ沈黙が走る。でもそれを破ったのは佐久間の方だった。
佐久間「阿部ちゃんも意外とやきもち焼きだよねぇ」
阿部「えっ? はぁ!? そ、そんなんじゃないし!」
佐久間「んひひっ」
阿部「……奏依は、俺ら全員の姫でしょ。抜け駆けすんのはやめよって言ったじゃん」
佐久間「んまぁ、そこは奏依が決めるとこだから。うかうかしてっと別の男に取られちゃうかもよ〜?」
例えば俺とか。そう言って笑う佐久間の顔はわりと本気のそれで。……ああ、うちのお姫様は本当に人気が高いというか、競争率が高いというか。どう頑張っても俺だけのものになるなんてのは夢のまた夢なんだなって痛感させられた。