叫び出したい午後だから
部屋を案内されてから、してやられたと思った。確かにそれぞれに部屋をやるとは言ってなかったけど、まさかレプリカの彼ーーシンクと同室だとは思ってもなかった。お互いがお互いに監視する為としか思えないが、ヴァンは「家族なのだから同じ家で暮らすのは当たり前だ」などと言って私たちの意見なんて聞きもしない。その上、師団長級の部屋をとか言ってたのに実際に与えられた部屋はキッチンはあるものの寝室が一つしか無い1LDKだった。
「騙された。これは完全に騙された」
「ベッドも一つしか無いんだけど」
シンクが開いた寝室を背後から覗くと、おそらくキングサイズのベッドを真ん中にシンメトリー的に家具が設置されていた。そんな大きなベットを設置しないで、小さなベッドを二つ置いてくれればいいのに。ていうかこのベッド部屋の扉より大きいけどどうやって中に入れたんだろう。
「もういいや、面倒になった。私右側使うからシンクは左側使ってね」
持ってきた私物が入った段ボールを適当に右側に置いてベッドにダイブする。今日は無駄に疲れた。鍛錬の他に大した量は無いけど荷造りしてそれを運ぶのに行ったり来たりして、まだ荷物をしまってないけどそれは明日やろう。
「ちょっと、ベッドに入るのシャワー浴びてからにしてよね」
「んー、わかってるし」
「わかって無いから言ってるんだけど」
シンクの小言を聞き流して私の意識は落ちていった。ベッドの寝心地は前のよりふかふかでその点は良かったところだ。前は硬いベッドで枕も硬くて最悪だった。キングサイズのベッドなんて初めてだし、シンクが任務とかで居ない時なんかはこのベッドを独り占め出来るんだと思うと少しだけテンションが上がる。
次の日、いつもより少しだけ早く目が覚めた私は、昨日入らなかったシャワーを浴びることにした。 シャワールームも前の部屋の時と変わらない広さで、洗面台なんかは前のより少し小さい気がする。並んで仲良く歯磨きなんてしないとは思うけれど、ここに2人並ぶのは狭いだろう。しかも歯ブラシとか洗顔フォームとかも置く場所が狭くてドライヤーんなんかは部屋に置いてある。完全に1人で暮らすことを前提に作られた部屋だと思う。
サッサとシャワーを浴びて部屋に戻りドライヤーのスイッチをオンにする。部屋に戻った時にはシンクもすでに起きていたから音も気にしない。
「下着姿で彷徨くのやめた方がいいと思うよ。一般常識的に」
「私の部屋なんだからいいじゃん」
「うわ、背中のアザ気持ち悪い事になってるし」
「うるさいなぁ。放っといてよ」
いずれシンクも奴等に目を付けられて、私みたいにアザだらけになるんだからな。綺麗な体でいられるのは今の内だからな。私も治癒術を覚えようとも思ったけど、それよりも体力を付けたかったからまだ覚えられてない。せっかく第七音素の素質があると言われたのに、覚えないのはもったいないでしょ。限られた人しか扱えない第七音素を扱えるかもしれないなんて最高じゃん。話がずれた。
「なんか食べ物ってあったっけ?」
「何も無い。食器や調味料すら無い」
「はぁ、せっかくのキッチンも食材が何もないなら意味無いし」
ていうか食器と調味料すら無いとかもう買い揃えるってなると出費が痛い。仕方ないからしばらくは食堂を利用し続けようと思う。そういう所優しくないっていうか、お金に関してヴァンはシビアだよなぁ。結局今日の朝食は食堂で取ることになったけど、朝食用にシリアルとミルクは今日中に買っておこうと思う。シンクもパンを買いに行こうと呟いていたから朝はあんまり食べる方ではなさそうだ。朝食を済ませたら、シンクと一緒に師団長に挨拶に行くようにヴァンに言われているから、食堂を出た足でそのまま師団のエライ人達が行なっている朝会をしている会議室に向かう。私も一緒に行く意味は謎だけど。
「会議に入れるのは響手以上の人達だけだから、私達は入れないよ」
「じゃあその師団長が出てくるのを此処でずっと待ってなきゃいけないわけ?」
「そういう事。めんどいよね」
前に待つのが面倒でこの廊下で小さめの譜術を発動させて気付いてもらおうと思ってやってみたけど、加減を間違えて廊下一面を水浸しにして凄く怒られた上に後始末までさせられたからこの案はもう2度としないと誓っている。本当は物音程度にするつもりだったんだけど、第四音素じゃなくて第三音素を発動させればよかったのかもしれない。まあそれでもドアが吹き飛ぶくらいにはなっていたかもしれないけれど。
「ていうかその仮面ってなに?」
「他の連中に顔を見られたら騒ぎになるから着けろってヴァンが」
「へー、なんか目立つね。逆に」
師団長を待ってる間にそういう他愛もない雑談をしながらシンクの仮面を見る。昨日部屋にいるときは着けてなかったけど、部屋を出る時にいつのまにか着けていてご飯食べてる時にも取らないからずっと気にはなっていた。けどそっか、導師のレプリカって言ってたから顔見られたらダメなのか。レプリカって言われてもピンと来ないけど、導師を知ってる他の人から見たらヤバいのか。何がヤバいのかわからないけど。
「おや、エルナおはよう」
「師団長、おはようございます」
「あぁ、君がヴァン謡将が言っていた子だね?」
「シンクです。…よろしくお願いします」
出て来るなり私に気づいた師団長は、私達に近づいて来た。師団長はシンクを確認すると、いつものように誰からも好かれるような優しい笑みを浮かべる。
「よろしくシンク。私はフィリップ、第五師団の師団長をしています。何か困った事があればなんでも聞いてくれていいからね。エルナもシンクが入団してくれてよかったね」
「はぁ?何でそういう解釈になるの?」
「年の近いシンクがいれば友達になれるだろう」
「アンタの頭の中はお花畑かよ!」
何が友達だよ。家族だの友達だの、私にはどっちも必要無いし。師団長は睨む私を見て笑うと「エルナは笑えば魅力的になるのになぁ」としみじみと言うが、それこそ余計なお世話だ。シンクとの顔合わせも終わって私はもう用済みだろうと思い2人を残し戻ろうと踵を返すと、慌てたように師団長に引き止められた。
「待って待ってエルナ!シンクはここに来て間もない、だからエルナにはパートナーになってもらいたいんだ」
「……私は強くならなくちゃいけないんだ!!そんな事に構ってられない!!」
私はそれから2人を振り返る事なく、鍛錬場へ足を向けた。
「騙された。これは完全に騙された」
「ベッドも一つしか無いんだけど」
シンクが開いた寝室を背後から覗くと、おそらくキングサイズのベッドを真ん中にシンメトリー的に家具が設置されていた。そんな大きなベットを設置しないで、小さなベッドを二つ置いてくれればいいのに。ていうかこのベッド部屋の扉より大きいけどどうやって中に入れたんだろう。
「もういいや、面倒になった。私右側使うからシンクは左側使ってね」
持ってきた私物が入った段ボールを適当に右側に置いてベッドにダイブする。今日は無駄に疲れた。鍛錬の他に大した量は無いけど荷造りしてそれを運ぶのに行ったり来たりして、まだ荷物をしまってないけどそれは明日やろう。
「ちょっと、ベッドに入るのシャワー浴びてからにしてよね」
「んー、わかってるし」
「わかって無いから言ってるんだけど」
シンクの小言を聞き流して私の意識は落ちていった。ベッドの寝心地は前のよりふかふかでその点は良かったところだ。前は硬いベッドで枕も硬くて最悪だった。キングサイズのベッドなんて初めてだし、シンクが任務とかで居ない時なんかはこのベッドを独り占め出来るんだと思うと少しだけテンションが上がる。
次の日、いつもより少しだけ早く目が覚めた私は、昨日入らなかったシャワーを浴びることにした。 シャワールームも前の部屋の時と変わらない広さで、洗面台なんかは前のより少し小さい気がする。並んで仲良く歯磨きなんてしないとは思うけれど、ここに2人並ぶのは狭いだろう。しかも歯ブラシとか洗顔フォームとかも置く場所が狭くてドライヤーんなんかは部屋に置いてある。完全に1人で暮らすことを前提に作られた部屋だと思う。
サッサとシャワーを浴びて部屋に戻りドライヤーのスイッチをオンにする。部屋に戻った時にはシンクもすでに起きていたから音も気にしない。
「下着姿で彷徨くのやめた方がいいと思うよ。一般常識的に」
「私の部屋なんだからいいじゃん」
「うわ、背中のアザ気持ち悪い事になってるし」
「うるさいなぁ。放っといてよ」
いずれシンクも奴等に目を付けられて、私みたいにアザだらけになるんだからな。綺麗な体でいられるのは今の内だからな。私も治癒術を覚えようとも思ったけど、それよりも体力を付けたかったからまだ覚えられてない。せっかく第七音素の素質があると言われたのに、覚えないのはもったいないでしょ。限られた人しか扱えない第七音素を扱えるかもしれないなんて最高じゃん。話がずれた。
「なんか食べ物ってあったっけ?」
「何も無い。食器や調味料すら無い」
「はぁ、せっかくのキッチンも食材が何もないなら意味無いし」
ていうか食器と調味料すら無いとかもう買い揃えるってなると出費が痛い。仕方ないからしばらくは食堂を利用し続けようと思う。そういう所優しくないっていうか、お金に関してヴァンはシビアだよなぁ。結局今日の朝食は食堂で取ることになったけど、朝食用にシリアルとミルクは今日中に買っておこうと思う。シンクもパンを買いに行こうと呟いていたから朝はあんまり食べる方ではなさそうだ。朝食を済ませたら、シンクと一緒に師団長に挨拶に行くようにヴァンに言われているから、食堂を出た足でそのまま師団のエライ人達が行なっている朝会をしている会議室に向かう。私も一緒に行く意味は謎だけど。
「会議に入れるのは響手以上の人達だけだから、私達は入れないよ」
「じゃあその師団長が出てくるのを此処でずっと待ってなきゃいけないわけ?」
「そういう事。めんどいよね」
前に待つのが面倒でこの廊下で小さめの譜術を発動させて気付いてもらおうと思ってやってみたけど、加減を間違えて廊下一面を水浸しにして凄く怒られた上に後始末までさせられたからこの案はもう2度としないと誓っている。本当は物音程度にするつもりだったんだけど、第四音素じゃなくて第三音素を発動させればよかったのかもしれない。まあそれでもドアが吹き飛ぶくらいにはなっていたかもしれないけれど。
「ていうかその仮面ってなに?」
「他の連中に顔を見られたら騒ぎになるから着けろってヴァンが」
「へー、なんか目立つね。逆に」
師団長を待ってる間にそういう他愛もない雑談をしながらシンクの仮面を見る。昨日部屋にいるときは着けてなかったけど、部屋を出る時にいつのまにか着けていてご飯食べてる時にも取らないからずっと気にはなっていた。けどそっか、導師のレプリカって言ってたから顔見られたらダメなのか。レプリカって言われてもピンと来ないけど、導師を知ってる他の人から見たらヤバいのか。何がヤバいのかわからないけど。
「おや、エルナおはよう」
「師団長、おはようございます」
「あぁ、君がヴァン謡将が言っていた子だね?」
「シンクです。…よろしくお願いします」
出て来るなり私に気づいた師団長は、私達に近づいて来た。師団長はシンクを確認すると、いつものように誰からも好かれるような優しい笑みを浮かべる。
「よろしくシンク。私はフィリップ、第五師団の師団長をしています。何か困った事があればなんでも聞いてくれていいからね。エルナもシンクが入団してくれてよかったね」
「はぁ?何でそういう解釈になるの?」
「年の近いシンクがいれば友達になれるだろう」
「アンタの頭の中はお花畑かよ!」
何が友達だよ。家族だの友達だの、私にはどっちも必要無いし。師団長は睨む私を見て笑うと「エルナは笑えば魅力的になるのになぁ」としみじみと言うが、それこそ余計なお世話だ。シンクとの顔合わせも終わって私はもう用済みだろうと思い2人を残し戻ろうと踵を返すと、慌てたように師団長に引き止められた。
「待って待ってエルナ!シンクはここに来て間もない、だからエルナにはパートナーになってもらいたいんだ」
「……私は強くならなくちゃいけないんだ!!そんな事に構ってられない!!」
私はそれから2人を振り返る事なく、鍛錬場へ足を向けた。