1 たとえば長い時間の中に、面差しさえ霞んでも
熊谷友子という人物を端的に表すとしたら、大多数の人間は「男勝りな女の子」だとか「男の子よりも格好いい子」なんて言葉を選ぶのではないだろうか。くだらない嘘はすべて見抜いてしまいそうな黒髪に、肌艶のよいなだらかな身駆。持ち前の快活さと面倒見の良さから、彼女にそんな印象を持つこともまあ理解できる。
しかし、私、加藤糸は彼女に対して少し違う印象を持っている。
彼女は誰よりも周りを気遣い、自分を犠牲にしてでも他人が気持ちよく過ごせるように、なんてことを考えながら振る舞うことができる子だ。可愛いものが大好きなくせに「あたしには似合わない」なんて一歩引いたり、本当は自分も一杯一杯なくせに「手伝うよ」なんて引き受けてしまったり。友子のいいところは、友子の悪いところでもある。自分のことよりも他人を優先してしまう彼女は、今までもたくさん損をしてきていると思う。それでも友子は、「そんなことないってば」なんて明るく笑い飛ばしてしまうんだろう。
彼女を一言で表すなら、可愛くて格好良い子。それと、気を使いすぎて自分が損をしてしまうような女の子。私にとって目が離せない幼馴染、それが熊谷友子だ。
幼馴染。私たち二人は、そんなありふれた言葉で表現することができる関係にいる。それ以上でも以下でもなく、ただの幼馴染。限られた枠の中で、私たちは付かず離れずの状態を保っている。親友なんて照れ臭い言葉は似合わない関係だけど、友達だとか軽い名称で呼ぶことはできない。
私と全くおんなじことを、友子も思っていてくれたらいい。そんなことを、いつも頭の片隅で願っている。