青空にからのおとは静かに映ゆる
風で。
飛んでいってしまったのは楽譜だった。あの頃の僕はそんなものが読めるはずもなかったけれど、それが大切なものだと分かっていたから。一人で拾い集める羽目になった楽譜。まるで暗号のような紙面。僕はただ、一人でそうすることがつらかったのではなかった。一人で怒られることがつらいかったのではなかった。
僕は、ただ。
―――もしかしたら、
なんて。
一瞬でも期待をしてしまった自分を恥じたのだ。一人で歩けると、歩かなくてはならないと、自負していたくせに、そうしなくて良いのだと言ってくれる人間を僕は求めてしまっていた。
風を。
思い出す。
そんなものなかった室内を。ただの僕の過失でばらばらになった、論文を。期待などしていなかった、目に映っても助けてくれるだなんて思わなかった、なのに。
拾ってくれた、その指先を。
「………貴方と彼が違うことなんて、最初から分かっていたはずなのに」
そんな当たり前のことを、ああして突き付けられるまで気付かなかったなんて。
「僕もまだまだなのでしょうね」
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