醒めない夢に溺れる
連れて行ってくれ、と。そんなことを頼んだところで彼が絆されてくれるような人だとは思っていなかった。でも、それは私のことを大切に思っていないからじゃあない。私のことを大切に思っているからこそ、彼は正しい判断をするのだ。私が、何処でなら有用に生きられるか、ということについて。
きっと、彼は分かっていた。
私に向いているのは看護婦ではない。私に向いているのは、彼と同じ場所だった。女であるこの身では確かに難しくはあるだろうが、不可能ではないと彼は知っていた。知っていたのにそれを私に言わなかったのは、私がそれを望んでいないと分かっていたからだろう。
「…伊佐早先生は、少し、鈍いふりをするのが得意なんですよ」
自嘲気味なその言葉にかつての師は頷いた。
「そうですね。そして、私たちもそんな彼を止めなかった」
共犯者になって欲しいですか、と師は問うてくれた。それでも私は首を横に振るのだ。
「これは、私が背負いたいのです」
貴方だけが夢を見ていたんじゃない。
「それが、伊佐早先生の望んでいたことではなくとも」
―――兄さま。
その名前は、封印されたまま。
*
睡郷 @suikyou_odai
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