ジューン・ブライド



 六月は花嫁の季節、そんなことは白水だってようく分かっている。だから目の前の担当アイドルであり恋人目前な清い関係である白坂小梅が何を求めているかだってとてもよく分かっている。日本の法律もクリアしていないし条例としてもアウトという最早満身創痍のような状態ではあるものの、そもそもアイドルとプロデューサーがどうこう、というのはあまり外聞が良くないものであって。それこそ小梅ちゃんが引退するような―――そんな日が来て欲しくはないなんて気持ちも勿論あるのだけれど―――時に初めて発表する、というような状態が一番良いのは分かっているしちひろさんにもよくよく言い聞かせられている。花嫁衣装の撮影は他のアイドルに回っていた、それは仕方がない。どうしたってまだ小梅ちゃんには少し早いのではないか、というのとあとはやはり、いつものイメージと花嫁衣装、というのがあまり結び付かないところがあるのだろう。
 けれども小梅ちゃんだって一人の女の子であり、ちゃんとそういったものへの憧れもしっかり持っているのが現状である。だから。
「その、」
白水は何とか言葉を発するのだ。
「予約、は。出来ます、か」
「予約、ですか」
「まだ、小梅ちゃんは結婚出来る年齢じゃあありません」
「はい」
「でも、僕に、予約させてくれませんか」
そうして出して来たのはピンキーリング。これであれば願い事があるのだと、言うことが出来るだろうしそれは嘘にならない。薬指には嵌められないけれど、小指で今は。
 小梅ちゃんはそれを見て、くれるんですか、と言った。
「願い、事…」
「ああ、ええと、全然普通に好きなことで良いからね!」
「プロデューサーさんと…結婚…」
「………願って、くれるの?」
「だ、め?」
「だめじゃない…」
思わずその可愛さに顔を覆ってしまったけれども、無事にそのピンキーリングは小梅ちゃんの小指に収まった。
 これがいつか、本物の婚約指輪から結婚指輪に、小指から薬指へと少しずつ、変えていければ良いと思う。


















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