私が死なないために彼らを愛してやることくらい、出来なくてどうしましょう?
*本作品は犯罪行為を推奨するものではありません。
どうして、とランスが聞いたのはそのしたっぱがひどく異端に見えたからだ。実際したっぱの中でも浮いているのだろう、その周りには人影はなく、あるのは彼女が連れているポケモンの影だけ。他の団員と同じポケモンを連れているというのに、彼女のポケモンは昏がりでも一目見れば分かるほど周りからは浮いていた。
毛艶、なつき、はたまた技のキレまで。
ああ、またあのしたっぱだ、とランスが思うほどに彼女のポケモンは他とは違う。それがロケット団らしくないと、一人、浮いているのを知っていた。
―――別に、悪逆非道になれという訳ではない。
ロケット団には行き場のないものが集まるという側面もある。それはサカキ様が決めた方針でもあるし、だからこそ彼女はこんなところにいるのだろうが。
それでも、気になるものは気になるのだ。
「どうして、ポケモンを可愛がるのです」
ポケモンは道具だ。少なくともランスはそうとしか思っていない。相棒、そう言うトレーナーがいることも知っている。家族、そう言うトレーナーがいることも知っている。知っているけれどもそれは違う世界の話で、少なくともランスには、ロケット団にはそうであって、だからこそポケモンを殺したりポケモンに殺させたり、なんてことが出来るのだと思っている。
思っている、のに。この何処かあどけない表情をしたしたっぱはただ、ポケモンを可愛がる。まるで普通のトレーナーのように。ロケット団にいることが間違いであるように。けれどもその扱いに反して彼女は彼女のポケモンと共にロケット団に貢献しているのだから、どうして、なんて言葉が口をついて出たのだ。
したっぱは聞かれたことが一瞬分からなかったようでこてん、と首を傾げてみせた。それから意味を理解したのか、あ、あー…なんていう間抜けな声を上げる。
「ランスさんは銃を持っていますよね」
「はい」
「では銃の手入れとかもされますよね?」
「ええ、勿論」
「それと一緒です」
「はい?」
何が一緒だと言うのか。
したっぱは天真爛漫さを湛えながらその先を続ける。
「ポケモンは道具、私はそう思っています」
何を、と瞠目したのが分かったのだろう。意外ですか? と彼女は笑った。
「道具には自分の生命をあずけますから万全の状態をとってやる。銃にとっての手入れが、ポケモンにとっては愛情を注ぐ行為に当たるんです。少なくとも私は、そう思っています」
「…詭弁、では」
「ないです。実際彼らは愛情を注ぐことによって私の命令をしっかり聞くようになりましたし、それで失敗したことはありません」
彼らはひとを殺せます、ととじた彼女に、ランスは何を言うことも出来なかった。
*
(貴方以外の人間なんて全部ゴミですよ、と)(そんなことさえ言ってくれるような気がする)
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