その笑顔が憎い
とても素敵な人だった。人間として、上司として、これ以上ない人に恵まれたと思っていた。だから今、こんなにも胸の中を炎のようなものが這い回っていて、私は殺人を犯すような人間の心情が理解出来た気になっているのだ。
「ホークショー」
どうしたんだ? と言った様子で彼は言う。彼は何も悪くない。ただ、私が今まで知らなかった家族の存在を、今、彼が写真を眺めているのを見て知ってしまっただけ。たまたま既婚者に恋をしてしまっただけ。よくあること、よくある話、なんてワンパターン。珍しくもない、陳腐な展開。
それでも私は笑うのだ。
「いいえ、何でも」
あまりに幸せそうだった、彼の笑顔を胸に刻みながら。
*
箱庭006 @taitorubot
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