お約束を頂戴な。



 アーロン・ホッチナーがその女の家を訪ねることに深い意味があるかと言うと実のところないような気がしてくるのが現状だ。そもそもまだ#ニ罪を起こしていない人間の監視など、きっと身体が幾らあっても足りない。だからそのどう考えても割に合わないことをしているのには、別に理由があるはずなのだ。
 そんなことを考えているホッチナーの手は、女に取られていた。
「…人を殺した手」
うっそりと人の手を持ち上げて撫でるものだからまたろくでもないことを考えていたのだろうと思っていたが、そう来るとは。
「…不可抗力だ」
「別に人殺しの手とは言ってないわ」
「ああ、そうだったな」
「貴方の気に障ったのは流石の私でも分かった。分かるように言ってくれたの?」
「そうかもしれない」
いつもだったら分からなかっただろう、という判断は正しい。
 女は馬鹿ではない。だと言うのにまるで迷子になったようにいつだって正しさを見失っている。
「ああ、でも貴方の手で生命を終わらせた人はきっと幸せね」
「…まさか」
死んでいった犯人たちを思う。死んだからと言って事件が解決する訳ではないのに、資料上は解決したことになる。
「私のこともいつか殺してくれるのかしら?」
「だめだ」
 反射のようだった。
「君が罪を犯したら、それこそ罪を犯したことを後悔するような目に合わせてやる。絶対にだ」
じっと強い瞳で見つめれば、諦めたように女は息を吐いた。それからふふ、と女は、犯罪者予備軍とホッチナーに断じられた堀越は笑う。
「貴方に殺されてみたかったのに」


















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