あなたを幸せに出来るのは、私じゃないなんてこと分かってる
クリスマスよ、と言うとそうだったな、という言葉が返って来た。
「私が恋人と過ごしているとは思わなかったの」
「恋人がいるなら早めに紹介してくれ」
「なんて紹介するのよ。この人は私を監視している人です、って?」
「以前世話になった刑事ともで言えば良いだろう」
「嘘ではないし?」
「嘘ではないし」
このまま追い返すのも芸がないし、そもそも彼を追い返す理由もないので招き入れる。クリスマスに男女が同じ家でクリスマスパーティ。そう並べれば人間の脳はそこそこピンク色―――こっちではブルーなのだったか―――つまりそう言った下世話な妄想に結び付く気がするのに、どうにもそうは思えない。ケーキを買ってくるべきだっただろうか、いや、そもそも今日は私にとっては平日で、いつもと変わらない日のはずだったのだから買ってくるならホッチナー捜査官が買ってくるべきだ。
「何もしていないのか? クリスマスだぞ?」
「そのクリスマスに前触れもなくやって来たのは貴方なのだけれど」
嫌味を言っても特に効かない。そういうのはそこそこに関係の深度があるものにしか効かないのだ。そもそもどうでも良いとしか思っていない相手に、何がどうやって刺さるのか。
「ツリーも?」
「リースも」
「珍しい」
「だって、何をしたら良いのか分からないもの」
日本ではクリスマスはただのイベントだった。でもこっちではちゃんとした行事だ。意味のあるお祭りだ。疎外感はいつものことだけれど、紛れることすら出来なくなる。幸せそうに寄り添う名前も知らない誰かの、死ぬ妄想をしている。
「私には幸せってものがなんなのかよく分からないし」
ホッチナー捜査官は何も言わなかった。
「解えのなさそうなものの話は苦手なの。神様とか」
「日本では神の存在は普通ではないのか?」
「逆。普通すぎているのが当たり前、助けてくれないのが当たり前」
財布は何処に置いただろうか、私は立ち上がる。
「だからこっちに来てみんなが教会に通うのがイベントじゃないって知ってびっくりしたの」
ケーキ買いに行って来ます、十分で戻るから、と言えば予想通りホッチナー捜査官は着いていく、と言った。
*
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