風呂場に近付くにつれて、物音が大きくなっていく。
そして硝子が割れる音が聞こえると、ただ事ではないというのがありありと分かった。

「危ないですから、皆さんは中に入らないように!」
「ちょ、ここまで来て無理言わはるなぁ」
「行くよ姉さん」
「うん!」

と中に入ると、朔子が床に伏している傍でしえみがしゃがみこんでいたので、むつきは一角狼を召喚し、二人の傍に配置させた。
その先、浴槽に続くガラス戸が割れており、屍に押し倒された燐の姿があった。

「兄さん!!!!」
「!!!」

雪男は咄嗟に銃を構え、屍に向かって乱射した。
攻撃を受けた屍は窓を破って逃げてしまった。

「………」
「ゆ…きおッ、遅ェーぞ!!」
「しえみさん姉さん、朴さんは…」
「雪ちゃん…」
「屍の魔障を受けてるけど、命に別状はないわ」
「わ…私…」

焦った様子のしえみの傍に居る朔子の腕にはアロエが貼られている。
その近くには、しえみの召喚魔である緑男の幼生が、腹部からアロエを出してにこにこしていた。

「使い魔…!」

それに気付いた雪男は三人に近付き、朔子の様子を窺った。

「屍系の魔障は対処が遅れると命取りになる可能性があった。この処置は正しいです。
しえみさんがいなかったら、どうなっていたか…」
「杜山、さん…」

不意に、目を覚ました朔子が、しえみに声を掛けてきた。

「ありが、と」

思ってもなかった言葉に、一瞬頬を赤らめ驚いた表情をしたしえみだったが

「うん!」

と、すぐに飛びきりの笑顔を見せた。
その後、志摩達も大丈夫か〜などと言いつつ輪に入って来、じゃあ戻ろう。と風呂場の入口に来たらさっきまで服を着ていた燐が上半身裸になっていた。

「!?兄さんなぜ裸に…」
「…なりゆきで…」

と少し気まずそうに見える燐だが、内心は尻尾を見られたくなくて動く尻尾を掴みながら早く全員連れて出ていけ!と思っていた。
それを敏感に察知した雪男は何をやってるんだ!と内心怒りつつも、それを表に出すことなく「…じゃあ露出狂はほっといて行きましょう」と全員を連れて風呂場を出て行った。

やっと全員去った…と安心した所で、バサッと後ろから上着を掛けられた。
驚いて後ろを振り向くと、むつきが安心したような笑顔を携えて立っていた。どうやら自分の上着を脱いで掛けてくれたらしい。

「むつき!」
「サイズは小さいけど、裸のままよりは良いでしょ?」
「あ、ありがと」
「早く着替えてきなね」

と言うと、むつきは風呂場を出て行った。その後ろ姿を見て、
燐はむつきが上着を着ていて良かったと心底思った。



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