「…何をしている」
織姫が一護を助けたおかげで、一瞬の静寂が訪れた。オレンジ色の膜が崩れ落ちていく中で、ウルキオラは織姫に向かって静かに問う。問われた織姫は、困惑の表情を浮かべた。
「―――…………え…?」
「何故助けたと訊いているんだ」
「何故って…そんなの……」
「仲間だからか。それなら何故、最初の一撃から奴を守らない。何を躊躇った?」
「そ……そんなこと…」
「解らないか。教えてやろう、お前は――」
「…うるせえよ。ためらったとか何だとか…下らねえことベラベラ喋りやがって…。どうでもいいんだよそんな事は」
織姫とウルキオラのやりとりを中断させたのは一護だった。額からは血を流し体勢を整えているが、視線は以前ウルキオラを向いたまま。けれども、穏やかな口調で一護は織姫に話しかけた。
「助けてくれてありがとな井上。けど、危ねえから下がっててくれ」
「…黒崎くん…」
ピリピリとした空気に、二人は少ない言葉数で会話を終わらせると、一護はウルキオラに向けて再び構えた。
「ウルキオラ。意外と喋るんだな、お前。もっと無口な奴だと思ってたぜ」
そう言い終わるや否や、一護の斬魄刀から黒い帯が勢い良く広がった。月牙天衝だ。
「月牙か。俺には通用しないと未だ解らんか」
そのまま月牙を放つと判断したウルキオラは、冷たく言い放った。しかし、ウルキオラの予想は外れた。斬魄刀に月牙を纏わせたまま、一護はウルキオラに向かい突き進んできたのだ。
「!」
その行動に驚きはしたものの、その場から動くことなくウルキオラは攻撃を受け止めた。そして、静かに、しかしめまぐるしくウルキオラの思考は動いていた。
(月牙を放たずに剣にまとったまま…。月牙の威力を持つ斬撃にするという訳か―――…)
「甘い」
呟きと同時に、勢い良く一護の斬魄刀が弾かれた。勢いによって互いの身体は比例するように後ろへ下がる。
「浅知恵を利かせたつもりらしいが…忘れたか。お前は仮面を出した月牙でさえ俺を倒せなかった。仮面を出さない月牙など、どう使おうが無駄な事だ」
ウルキオラの言葉など、まるで聞こえていないかのように、鬼のような形相で剣を振るう一護。
そんな一護を二人から離れ、壁際に寄っていた織姫は、苦しそうな表情で見ていた。織姫から離れた場所で二人を見ていた萌苗もまた、思考の読み取れない表情で、二人の闘いを眺めていた。
「…黒崎くん…」
織姫が一護の名を呼んだその時、背後の壁が消え複数の腕が現れた。
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