―殺してとか殺すとか大きな事言っておいて、結局私、一護に何もしてないな…―

萌苗が惨状を見ながらぼんやりと思っていると同時に、攻撃の衝撃で起きた巨大な土煙が上がる。
落下していくのは服も肌もボロボロになった一護。仮面は割れていてもまだ白目の部分は黒く染まったままで、力が尽きていない事が分かる。

「く………そ…ッ…」

小さく悪態を吐き、何とか体勢を立て直そうと重く感じる首を持ち上げる。すると、急に視界に入ってきた現れたウルキオラの翼によって、強い力で建物に叩き付けられた。

「…理解したか?お前の姿や技が幾ら破面に似ていようとも、その力は天地ほどにも隔たっている」

建物に勢い良くぶつかったせいで、またも濃い土煙が上がる。その土煙が晴れた頃、ウルキオラの視線の先には、片膝を着き瓦礫を支えに体勢を整えようとしている一護が居た。息は先程よりも荒く、体力の消費の激しさが伺える。
そんな中ゆっくりとした歩調で、しかし確実にウルキオラは一護に近付いて行く。

「人間や死神が力を得ようと虚を真似るのは妥当な道筋だが、それで虚と人間(おまえたち)が並ぶ事など永劫ありはしない」

後数歩という所まで近付いた二人の距離。ウルキオラが近付いてくるのを感じたであろう一護は、残り少ない力を振り絞って立ち上がった。黒かった瞳の周りの色は、今や元の白に戻っている。
二人の力の差は歴然。それでも尚、立ち向かおうとする健気なまでの一護の姿に、ウルキオラは眉を寄せるという、らしくない表情を見せた。

「――――…月牙」
「無駄だと言っているんだ!!!」

ウルキオラから、らしくない怒声が響いた。遠くまで響いた声。今まで一緒に居たのに聞いた事の無い声に、萌苗は驚いた。
ウルキオラはその感情に任せ、一護に斬りかかる。衝撃で建物は崩れるが、瓦礫に潰されてしまう前にウルキオラは一護を掠り、弾くようにまた斬りつけた。
壁面にぶつかりながら上に登っていく一護の身体。頂上に身体を打ち付けると、一護は小さく咳込んだ。
間髪入れずウルキオラは一護の襟元を掴み、力が入っていない分自分より重い身体を持ち上げた。

「何故、剣を放さない。これだけの力の差を目にしても、未だ俺を倒せると思っているのか?」
「―――………力の……差か……。それが何だ?てめえが俺より強かったら…俺が諦めると思ってんのか…?」

息も絶え絶えなのに力強い一護が放つ言葉に、ウルキオラは目を軽く見開いた。

「てめーが強いのんか…最初ッから解ってんだ…。今更てめえの強さなんか…幾ら見たって変わりゃしねえんだよ…」
「…俺は、てめえを倒すぜ。…ウルキオラ」

一護の勝利に満ちた瞳を見、ウルキオラは襟元から手を放した。


「―――戯言だ。黒崎一護、お前のそれは真の絶望を、知らぬ者の言葉だ。知らぬなら教えてやる」

「これが真の 絶望の 姿だ」

再び暗闇が一護を襲った。
その暗闇は、ウルキオラの新たな姿を映し出していた…――――。




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