暫く時間が止まった。
否、止まったように感じた。
今の萌苗の姿は、失くなった右腕が再生されなかったが、まるで全身を骨で出来た歪な鎧を装着しているようで彼女の面影が全く感じられない。
そんな人としての形を失くしかけた萌苗の姿に、この場に居る全員が驚愕し誰一人として口を開かず、尚且つ一ミリも動く様子を見せないでいたのだ。
そんな中、萌苗が首を静かに鳴らす。それが合図となり、意識を戻した一護は剣を構え直した。
『…この格好嫌いなのよね。他の破面の解放と違って不細工だから』
篭もった声で話しながら一切構える素振りも見せず、萌苗はゆっくりと足を踏み出す。
『でも…すぐに終わる』
「!」
「黒崎くん!!」
先ほどのゆったりとした動作とは裏腹に、一瞬にして一護の前に現れた萌苗は至近距離から虚閃を放った。織姫が一護の名を呼ぶと同時に辺り一面は煙で覆われ、視界が機能しなくなる。
その時、虚閃が直撃したはずの一護が萌苗の横から突然姿を表し、斬りつけようとしてたのだが
『甘い』
と萌苗の声が聞こえると同時に、横から突然強い衝撃が走った。
その衝撃は二度三度、別々の方向から一護を襲い、一護の体はそのまま吹き飛ばされると近くの建物にぶつかった。ぶつかった箇所と周辺が大破する。
「ぐあっ…!」
萌苗の気配は動いていないのに、なぜ自分は攻撃を受けたのか……。
ずるずると身体が下に落ちていく中での一護の疑問は、視界が晴れた事によって明確になった。
まるで別の意志が宿っているかのようにユラユラと漂う六本の帯。それはよくよく見れば骨の尾で、元を辿ると萌苗の背後まで続いている。
時折その尾を振ってみたり地面に叩き付けたりしながら、萌苗は一護を見据えていた。
『コレが只の飾りだと思ったら大間違いよ。それともコレ、見えなかった?』
そういうと、ギュンと風を切る音と共に四本の尾が一護の四肢を支柱に突き刺し、身動きを取れなくさせた。
今の一護の格好は先ほどの戦いで布が肌を覆う面積が少なくなっており、そのせいで尾が直接肌を突き刺す。その強い痛みに、思わず一護の口から叫び声に近いものが漏れた。
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