それまで紡いでいた藍染の言葉を全て否定するかのように、一護が藍染に飛びかかっていった。勢い良く飛び出し斬りつけようと迫る中、藍染はジェスチャーのみで萌苗に下がるよう促した後、攻撃を難なく己の剣で受け止める。
暫くは一護が一方的に剣を振り乱していたが、それは藍染に届く事無く、最終的にはいとも簡単に素手で剣を止められてしまった。

「…落胆させないでくれ。こんなものじゃ無い筈だ、今の君の力は」
「信じられないか、私の言葉が」
「…当たりめーだろ…!」
「だが"事実"だ」
「嘘だ!!!」
「今までの戦いが全部てめえのせいだと!?全部てめえがそう仕向けたってのか!?そんなモン誰が信じるかよ!!」
「てめえ、前に言ったじゃねえか!!"自分がルキアを見つけた時は、ルキアは現世で行方不明になった後だった"って!!それなのに"ルキアに会った時から俺のことを知ってた"だと!?筋が通らねえじゃねえか!!」
「…面白い事を言う。今、君は自分で言っただろう、"嘘だ" "そんなもの信じない"。君は、今の私の言葉は嘘だと言うのに」
「その時の私の言葉は嘘ではないと言うのか?」

そう静かに自分の矛盾を指摘され、思わず一護は目を見開いた。

「…無理も無い事だ、同情しよう」
「この世界には最初から真実も嘘も無い。あるのはただ厳然たる事実のみ。にも関わらず、この世界に存在する全てのものは、自らに都合の良い"事実"だけを"真実"として誤認して生きる。そうするより他に生きる術を持たないからだ」
「だが、世界の大半を占める力無きものにとって、自らを肯定するに不都合な"事実"こそが悉く真実なのだ」

藍染の言葉を聞く内に、一護の顔は段々と俯いていった。しかし、それを気にする事も無く、藍染は言葉を紡ぎ続ける。

「君は事実の全てを知っているのか?朽木ルキアを現世駐在の任に就かせたのは誰か。阿散井恋次の装備に霊圧探知能力をつけさせたのは誰か。副隊長達への報告に、君達の進行方向に関する情報を加えたのは誰か」
「私は本当に崩玉完成から百年以上もの間、その在り処を突き止められなかったのか?」
「…一つ……訊きてえ」

自身から背を向けた藍染に、一護は絞り出すように質問を投げかけた。

「あんたさっき言ったよな…。俺が…あんたの探究の最高の素材になると確信したって…。何でだ…?何を根拠にそう確信した…?ルキアに会った時から俺を見てたってんなら…言ってみろ…。一体いつそう確信したんだ…!?」
「…最初からだ」
「…適当なこと言ってんじゃ…」
「…解らないか。最 初 か ら だと言っているんだ」

「私は君が生まれた時から、君のことを知っている」

首だけを自身にに向け、絶対的なオーラを纏いながら言い放つ。
刹那、周りの空気が、時間が、自身を纏う全ての時が止まった気がした。

「……な…………に………!?」
「君は、生まれた瞬間から特別な存在だった。何故なら君は人間と――――」

藍染が全てを言い終わらないうちに、巨大な霊圧と共に、藍染の右肩に刃が振り下ろされた。それを紙一重で交わした先、そして一護の視線の先には、想像もしていなかった自分の見知った人物の後ろ姿があった。

「―――喋り過ぎだぜ、藍染」




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