一護の眼前には、藍染と対峙するように、或いは自分を庇うようにして、一心の大きな背が写った。
あまりに急な出来事に驚きを隠せず、暫く目を見開いたまま黙っていた一護だったが、絞り出すように声を発する。

「………お………親父…………か…?」

自分で思っていたより小さく出て行った声は、意外にもしっかりと一心の耳に届いたようで、静かに一護の方を振り向くとそのまま勢いを付けて歩み寄ってきた。

「…おい…、何とか言えよ…。親…痛い!!!」

なかなか質問に答えない一心に焦りを感じ更に言葉を紡ぐ。が、至近距離まで近付いた一心は、いきなり一護の頭を最大限の力を込めて頭突きしてきた。これには反射的に痛みを言葉に変えてしまう。
そしてその頭突きの反動で、何回も地面に顔をぶつけながら一護は後ろへ吹っ飛んだ。あと少しで今まで立っていた建物からはみ出したのだが、一護はギュルンと反転すると建物の端を掴み、止まる事が出来た。

「うおお、あぶねえっ!!」

と安心したのも束の間、

「ぉぐ!!! 」

一護を見ても無言を貫いたまま、一心は一護を足蹴にした。

「てめえこのやろぉおおおおぉ」

と一護が吠えるがそれも軽く無視し、一心は藍染と萌苗をそれぞれ一瞥すると、一護を建物から落とした後、素早くこの場を離れた。

「距離を取ったか…。賢明な機転だ」

悠長に呟くと、周りを見回し二人の霊圧を探る。しかし、どう探知の範囲を広げても、二人の霊圧が感じ取れない。

「……血筋か」
「……」
「暫くの間は出来るだけ、私の傍を離れるな。萌苗」

藍染の言葉に、虚ろな目のままの萌苗は、声を発する事なく静かに頷く。
それを横目で確かめた藍染は、再び視線を空に漂わせ、二人の霊圧を探し始めた。

「…霊圧を消したか。相当強力な結界を張ったらしいな」

不意に、空間が微かに揺れた。
その変化を逃す事なく、藍染がそちらへ視線を移すと、其処には今まで何処に居たのか分からなかったギンの姿があった。

「…随分長い見物だったね、ギン」
「見物してたのと違いますよォ、手助けに入る隙も必要も見つからへんかったんです」
「…そうか」

二人の間に一瞬、妙な間が出来る。
しかしその間を割くように、一護がギンの背後から剣を振りかざし姿を表した。




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