全く人気の無い車道の真ん中で、藍染は膝を着くたつきに向かってゆっくりと近寄っていく。
近付いてくるにつれて、たつきに伸し掛かってくる霊圧も段々重くなり、思考を更に奪っていった。
―だめだ、体動かない、どうしよう。どうしよう、だめだ。
あ、みちる下ろさなきゃ。だめだ、間に合わない。
もう―
遂に脳が考える事を諦めた時、突然藍染に向かって何かが飛んでいき、彼の上半身に触れると爆発した。
「「!!!」」
「お困りの様だねガァ〜〜〜〜〜ル。そういう時はヒーローを呼ぶものだ」
薄く煙を纏う手を翳したままの状態で、一人の男がたつきに向かって独特の喋りで話し掛けてきた。
「スピリッツ!ア〜〜〜〜 オーーールウェイッ ウィズィィィユーーーーー!!!」
そして、素早くキレのある動作で地面に片手を置いた後両手をグルグルと天に向かって回し、最後に意味があるのか無いのか不明な英語を叫んで決めポーズを取った。
その人物は、初期の頃よく一護絡んでいたドン・観音寺だった。
「お待たせしました視聴者の皆さん。あなたのドン・観音寺、私のドン・観音寺、みんなのドン・観音寺が帰ってきました!!」
「帰って!!きーまーしーたーよーーーーーーーッ!!!」
この場にそぐわないハイテンションさと奇抜な衣装の観音寺が現れた事によって、周りは呆気に取られた。
暫く誰も喋る事無く観音寺を見ていたが煙が、晴れると同時に何事も無かったかのように藍染が観音寺に言葉を投げかける。
ある意味、ドン・観音寺も藍染も空気を読めていない者同士の争いが始まろうとしていた。
「…何者だ、君は?」
「むゥッ!!この私を知らぬとは無知なボーイだ!!TVは余り観ないのかねッ!?いいだろう!名乗ってみせよう私こそ―――」
「何しに来たのよドン・観音寺」
「NOーーーーッ!!!」
「今から私が自分でスペシャルな名乗りを上げようとしていたというのにッ!鬼かねガールは!?鬼かねッ!?」
「悪イこと言わないから帰んな。あんたができることなんて何もないんだから」
藍染が自分より何倍も年上だという事を知らない観音寺は饒舌に自己紹介を始める。それを止めたのはたつきで。
彼が登場し場の空気を壊した事によって、精神的に多少持ち直したようだ。
「う…ッ」
しかし、そんな雰囲気はすぐに壊される。急に観音寺の身体にも藍染の霊圧が伸し掛かってきたのだ。
鈍感な観音寺ですら、身体に掛かる霊圧が藍染から放たれているのが分かると、すぐに藍染の方へ振り向いた。
「……………」
「…そろそろ、私の霊圧に耐えられなくなってきた頃か。いや、むしろ、これまで良く耐えたと言うべきか」
「ほら!早く逃げなって!!あんたじゃどうにもなんないんだから!!」
「…逃げる?それはこのヒーローに向かって言っているのかね?…無知なガールだ。教えておこう」
「戦いから逃げるヒーローを、子供達はヒーローとは呼ばんのだよ」
そうたつきに言うと、愛用のステッキを前に突き出すような形で藍染に向かって走り出した。
「止すんだ。人間如きが私に触れれば存在を失うぞ」
「観音寺!!」
藍染に触れる事なく、ステッキの先端が灰となって消える。気にする事無くそのまま突っ込んで行こうとする観音寺の前に素早く現れたのは、黒い服を纏った一人の人間。金髪が靡く中、その人間は力強くステッキを掴んで観音寺を止める。
「…………ほう」
観音寺は驚き、たつきは意識が朦朧とした中で、藍染は笑みを零しながら、ギンは何を考えているのか分からず…。
それぞれの眼が一人の人間……基、乱菊に注がれる。
「間に合ったわ…。藍染………ギン………!」
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