十分に怪我の回復をしていない乱菊の身体は悲鳴を上げる。それに伴って身体中に汗をかき息も自然と荒くなっているが、瞳は強い光を宿したまま藍染達を睨んでいる。

「…乱菊」

その瞳に応えるように、誰かに聞こえるか否かの声で、ギンが静かに乱菊の名を呼ぶ。
しかし、ギンの声は誰の耳にも届く事は無かったようだ。

「……な…、何だねガールはッ!?危険だ!ここはガールの様なガールが来る場所じゃない!一般人はさがっているのだ!!」
「逃げなさい」

急に現れ自分を止めた女性に驚いたのも一瞬。すぐにいつもの調子で何も知らない観音寺は、乱菊に対して注意をした。
しかし、そんな言葉など聞こえなかったかのような口振りで、乱菊は観音寺に背を向けたまま逃げるように告げる。
またも不意を突かれたかのように何も言えなくなった観音寺に対して、乱菊は言葉を続けた。

「あの二人はあたしが止めるから、あんた達はさっさと逃げろって言ってるの」
「…な…何を言ってるのだガール!このドン…」

だが、乱菊の警告を聞いても尚も言う事を聞かずにある観音寺。
そんな観音寺に、乱菊はこれ以上何も言わせまいとばかりに、思い切り彼の口を掴んだ。

「うるっさいわね!!ごちゃごちゃ言ってないでその子達かついで逃げなさいよ!!ヒゲもいで帽子焼いてそのヘンなグラサン顔にメリ込ませて誰だかわかんなくされたいの!?」
「ひ…ひいッ!?」

乱菊の脅迫弾丸トークに負けた観音寺は、サングラスと髭を両手で隠すと素早く乱菊からたつき達の方へ向かい、みちるを担いでたつきの腕を持った。

「ア…アンダスタンッ!アブソルートリィアンダスタンッ!了解したッ!!ここはガールに任せよう!!だがッ、危なくなったらヒーローを呼ぶのだぞ!「助けて!!ドーン…」

観音寺が決めポーズを取り全てを言い終わる前に、いい加減にしろとばかりに乱菊は其処ら辺にあった缶を豪速球で投げつける。
見事缶が顔に命中すると、再び素早い動きでたつきを背負い走り出した。

「OUCH!!いやッ痛くなどないッ!!」

そう言いながら走る観音寺の背に揺られながらも、たつきの視線は自然と乱菊に集中していた。

―誰だろう、一護の知り合いかな。着物も似てるし。きれいな人。
一護め、あんな美人の知り合いがいるなんて聞いてねーぞ…―

彼等が遠くなっていくのを乱菊は背で感じ、藍染は視覚で捉えながら乱菊に話し掛ける。

「"間に合った"と言うのは、今の人間達を逃がす事に対してか?それとも、空座町を滅して王鍵を創る事かな。まぁ、どちらにしても誤りだが」

と藍染が話し掛けても、乱菊は藍染達を睨むばかりで何の返事も帰ってこない。

「どうした。私と話すのは苦手かい」
「藍染隊長」

柔らかな口調ながらも威圧的な藍染の言葉に、乱菊が反応を返す事は無い。
そんな状況を打ち破るように藍染の名を呼んだのは、ギンだった。

「昔の知り合いがすいません。ボク、あっちへ連れてきますわ」
「構わないよ。時間ならあるんだ、そこでゆっくり話すと良い」
「お邪魔でしょう」
「そんな事は無い」

…一瞬の出来事だった。

二人の押し問答が続くのかと思ったのだがそれもすぐに途切れ、ギンが一歩踏み出したと思ったら、瞬く間に乱菊を攫い消えてしまったのだ。
二人の気配が無くなって暫くは無言が続いたのだが後ろに居る萌苗に言うでもなく、藍染はひとりごちに呟く。

「…やれやれ、相変わらず面白い子だ」

そう言うと今の空気を楽しむように、藍染はゆっくりと歩き出した。




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