「……き………きた………っ」
「な…何!?何が来たの!?」
「あたしも説明できるほど分かってないの!いいから立って!逃げるよ!!」
「あ…あとでちゃんと説明してよね!わかんなくていいからさ!!」

来たと言われても、自分には何が来たのか分からない。分からないが、この友人達がふざけて焦りの表情を作り、逃げようなどと言う訳が無い事を知っているので、千鶴はたつき達の言う事に素直に従う事にした。
水色もゆっくりと立ち上がると、傍にあったビール瓶を一本取り出した。

「い…急げ!!」
「とりあえずこのまま路地だ!建物の裏を回って見つからないように町外れまで行こう!」

そう提案し、浅野とたつきを筆頭に、全員が入ってきた道とは逆方向に走り出す。
しかし、走り出した途端に突如として藍染が姿を現した。

「「「!!!」」」
「…なに…!?あれがそうなの…!?」
「"見つかった"と、思ったかい?違うよ。私 が 捜 す 真 似 事を 止 め た だ け だ」

急に現れた藍染を見た水色と千鶴は、彼の人とはかけ離れたその能力に恐怖した。
一方で行き先を塞ぐように現れた藍染は、この状況を楽しんでいるようだった。
そんな藍染に向かって、たつきと浅野の間を上手く通り過ぎて瓶が投げつけられた。
瓶は藍染に当たる前に灰となって消えたが、投げたのは言うまでもなく先程瓶を取り出していた水色だ。

「うわ。ホントに灰になるんだ」

先程の表情はどこへやら。今は感心すら覚えている表情で水色は呟く。

「じゃ、こっちで」

と言い、再び水色は一本のガス缶を取り出すとノズルを軽く折り、地面に転がした。空気の抜ける音と共に周りにガスが充満していく。

「ホラみんな逃げてっ!!」

次々と事を起こしていく水色に驚いている面々の背中を押して、路地から出て行く。出て来た場所に萌苗が待機していたが、気に止める余裕は無い。
全員が出てから水色は再び路地に顔を出すと、点火したライターを放った。すると、ガスが充満した路地から大爆発が起き、周りが煙に包まれる。

「………ム……ムチャクチャするわね、あんた…」

予想外な行動を起こした水色に、安堵したのか思わずたつきから感想が述べられた。……のも束の間、煙の中からすぐに藍染が歩いて出て来る。
顔にも身体にも傷一つ付いていないのを見ると、全員の焦りと恐怖はピークに達した。

「うわああああ!!やっぱり無理だったーーー!!!」

煙の中で藍染が微笑みながら浅野達を見る。
それを察したのか否かは分からないが、浅野はいきなり立ち止まり持っていた斬魄刀を構えた。

「く…くそ…っ」
「!ケイゴ!!」
「この刀は一護と同じ格好の奴が持ってたんだ!これなら多分あいつに届く!」
「バカっ!!刀が届いてもあんたは死ぬだろ!!浅野っ!!!」
「…」
「……っ!!」

誰の静止の声も聞かず、冷や汗を流しながら刀を構え立ち止まる浅野。それに反応して動いたのは藍染ではなく、藍染の後ろに居た萌苗だった。
萌苗は藍染を追い越して浅野に向かっていく。その表情は冷たく、浅野の背筋を更に凍えさせた。が、

「返せばかものーーーーー!!!」

と、二人の斬魄刀が交わる前に浅野の頭に盛大に拳が降ろされた。新たに現れた人物に萌苗は警戒し、後ろに飛び退く。
殴ったのはアフロ頭の死神で、固い音をたて拳が頭にぶつかった拍子に、浅野の手から斬魄刀が離れる。宙に浮いた斬魄刀を死神は素早く飛び上がりキャッチすると、地面に着地した。

「…あ…アフさん!!」

頭を抑えながら浅野は、殴った張本人を見てそう呼んだ。
浅野から"アフさん"と呼ばれた死神は、身体から嫌な汗が流れているのを感じながら、藍染達を見据えていた。

「う……ふおおお……」
「だ…大丈夫かよアフさん、ムチャすんなって…!震えてんじゃ…」
「うるさい!震えてない!!素人に斬魄刀など使わせる訳にいくか!!」

そういうと、死神は斬魄刀を天に翳すように持ち上げた。

「お早う!!『土鯰』!!!」

解放名を叫ぶと、手にしていた斬魄刀は鈴と帯の装飾を施した円形の刃物へと姿を変えた。そして土鯰を素早く地面へとめり込ませると、そこを始点に藍染に向かって地面に亀裂が走っていく。
それを見た萌苗が更に飛び退くと同時に、亀裂が走ったコンクリートは巨大な塊達となって持ち上がり、四方から藍染を挟み込んだ。

「よしッ、逃げるぞ!!!」
「結局逃げることにしか使えねぇんじゃねーか…」
「うるさいッ!!」

仕掛けてすぐにダッと走っていく死神を呆れながら見る浅野。
だが、土鯰の能力で立ち塞がっていたコンクリートの壁はすぐにふわりと浮き上がり、藍染の姿を晒すと大きな音を立て地面に落ちるのを見るや否や、先に走っていた死神を追い越して行った。

「ひ…ひいっ…」

走りながらも心の何処かで全員が「もう駄目だ」と覚悟した瞬間、藍染の後ろの空間が動いた。
速い動きだったに加え着地はふわりと軽いものだったので、藍染は反応が少し遅れてから横目でギンを見た。

「…只今戻りました。藍染隊長」




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